――NICTというと、Beyond 5Gや光ファイバー、サイバーセキュリティなどに関する研究開発が有名ですが、バイオICTや脳情報通信など、既存のICTの枠には収まらない研究開発にも注力していることはあまり知られていないかもしれません。そうしたICTの新しい可能性を切り拓く領域をNICTで担当しているのが未来ICT研究所です。
和田 NICTの研究開発体制は1年前、次の5つの研究所に再編されました。電磁波研究所、ネットワーク研究所、サイバーセキュリティ研究所、ユニバーサルコミュニケーション研究所、そして未来ICT研究所です。
我々以外の4つの研究所は、名前を見れば研究分野が分かります。それに対して、未来ICT研究所は名前を見ても一体何を研究しているのか分かりにくいと思いますが、実際、研究テーマはかなり幅広くなっています。
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
未来ICT研究所長 和田尚也氏
――「従来の概念を超えたイノベーションの創出と育成」という目標を和田研究所長は掲げていますが、そうした可能性のある研究が集まっているのですか。
和田 そうです。未来ICT研究所の研究領域は「フロンティアサイエンス分野」と設定されています。以前はフロンティア研究分野だったのですが、2021年4月に変更され、フロンティア(辺境)にサイエンス(科学)が新たに追加されました。
その狙いはこのように説明できます。情報通信の研究開発は、既存の技術をさらに発展させていくエンジニアリング(工学)のアプローチが中心かと思います。一方、既存技術の延長線上ではなく、まだ誰も気づいていないような分野を研究開発するのがサイエンスと言えます。
不毛にも見えるフロンティアをサイエンスで切り拓き、情報通信に使える技術を見出し、育成して広げていく――。そうしたフロンティアサイエンス分野の研究開発を行うのが未来ICT研究所です。