<特集>通信事業者DX キャリアの未来学「B2B2Cこそ通信事業者の勝ち筋」アクセンチュア廣瀬隆治氏

上位レイヤーで通信事業者が勝つためには何が必要か。優位性を活かせるのはB2B2Cと指摘する廣瀬氏が、通信事業者が乗り越えるべき課題と目指すべき方向性を語る。

EBITDAマルチプル(収益力を表すEBITDA等の指標を用いる企業価値評価方法)を見ると、いろいろな業界の平均が11倍なのに対して通信業界は6倍。市場の飽和は明らかだ。

通信事業は今や成長エンジンではなく、手段だ。その上で、B2BやB2B2Xで幅広くDXの価値を届けるという上位レイヤーの戦いにシフトしていくことが求められる。

上位レイヤーのビジネスは、海外の通信事業者と比べると日本は進んでいる。特にB2B2Xについては、全国津々浦々まで4Gのカバレッジがあることが日本の通信事業者の強みだ。B2B2Xをやろうとしても、エリアによってはインフラ整備から始めないといけない海外との違いだ。

一方、5GでB2B2Xをさらに推進していくには、通信事業者の組織がB2CかB2Bかで分かれているところに課題がありそうだ。

B2B2Xの中でも、B2B2Cこそが携帯電話事業者の優位性を活かせるところだろう。エンドユーザーが法人のビジネスは、この工場、このオフィスと特定サイトだけが対象となり、ともすればWi-Fiでやればいいという議論になりがちだ。対して、B2B2Cは「全国津々浦々」だ。

だが、5Gの敷設計画では、地方都市までカバーするのに何年もかかる。ネットワークの作り方は基本的にB2Cを前提にしてきているので、5Gの敷設も大都市圏からだ。例えば、5Gを用いて店舗の無人化・省人化をしようとした場合、東京と大阪だけでなく地方までカバレッジを広げる必要がある。

B2B2Cのユースケースをどうするかは、ネットワーク敷設の観点で、それほど考えられてこなかった。したがって、B2B2Cビジネスを伸ばすには、これまでとは異なる経済合理性、上位レイヤーまで含めた考え方でROIを考えていかないといけない。

ただし、B2B2Cは法人とコンシューマーの視点が入り混じるので、ここを上手に考えられるかというところに組織的な難しさが存在する。今までの通信事業者のDNAとは違う発想が必要になる。

 

アクセンチュア 廣瀬隆治氏
アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ
通信・メディア プラクティス 日本統括マネジング・ディレクター。
通信・メディア・ハイテク業界を中心に幅広い業界においてデジタル戦略立案を支援

業界DXの推進がカギB2B2X、上位レイヤーで戦うとしても、通信事業者がERP等の開発を狙う必要はない。やらなければならないのは、5GやMECを活用した通信事業者ならではのソリューションだ。

我々は「NW密連携」と呼んでいるが、これを開発・提供するには、SIのケイパビリティが不可欠だ。それも、単にSIerに取り次ぐのではなく、SIを“手の内化”する。上流を押さえることによって、ネットワークのプロフィットも、SIの莫大なプロフィットも内製で取りに行く。そういう発想が必要になってくる。

SIのケイパビリティを内製する、場合によってはキラーソリューションを買収するのでもいいが、これをやらなければ、5G/MEC展開において通信事業者だけが持つインフラの優位性も活かしきれないし、NW密連携の価値を十分に刈り取れない。

なお、インフラ優位性以外にも通信事業者にはブランドや顧客基盤という強みがある。ヘルスケアやエンタメといったテーマごとに、それが好きなユーザーが集まるコミュニティ型ビジネスで、この強みが活かせるのではないか。例えば、そのコミュニティでトークンエコノミーを作る。この経済圏では、GAFA的な一人勝ちするプラットフォーマーは必要ない。共存共栄モデルの新しいプラットフォームビジネスを牽引していく役割も、通信事業者に期待したい。(談)

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