SPECIAL TOPICWi-SUN認証デバイスが1億台突破 日本発の世界標準規格の普及加速

スマートグリッドやスマートシティの実現手段として海外でも採用が広がる日本発のIoT無線規格、Wi-SUN──。2月に開催されたイベント「Wi-SUN Open House 2022 Winter」では、1億台を超えるWi-SUN認証デバイスが出荷されていることが示された。2.4Mbpsへの高速化、電力・水道・ガスの共同インフラ化など、新たな進化も始まっている。

米英を中心に加速するWi-SUN FANの導入続いて講演を行ったのが、Wi-SUNアライアンス プレジデント&CEOのフィル・ビーチャー氏だ。

Wi-SUNアライアンス プレジデント&CEOのフィル・ビーチャー(Phil Beecher)氏
Wi-SUNアライアンス プレジデント&CEOのフィル・ビーチャー(Phil Beecher)氏

「米調査会社のNavigant Researchの推計によると、すでに世界で1億台を超えるWi-SUN対応エンドデバイスが展開されている。スマートメーター、次世代電力インフラの負荷管理、配電オートメーションでの採用が拡大しており、さらにスマートシティ領域での活用も広がっている」

ビーチャー氏はWi-SUNの現状をこのように説明した後、Wi-SUN FANの海外事例もいくつか紹介した。

米ハワイアン エレクトリック カンパニーは、配電網のスマート化をWi-SUN FANを用いて推進している。米パシフィック ガス アンド エレクトリックは、停電管理に活用して年250万ドルの経費節減を可能にした。

米フロリダ パワー アンド ライトは、Wi-SUN FANのメッシュネットワーク機能を活用して、暴風雨後の電力網の迅速・効率的な復旧を実現している。

スマートシティネットワークの構築をWi-SUN FANで進めているのは英ロンドン市だ。「老朽化した1万2000基の街灯設備の更新に合わせて、これらを結ぶ通信網をWi-SUN FANで構築。これをベースに、パーキング、大気汚染状況などの環境データ収集、交通制御などにも活用できるスマートシティネットワークが整備されている」

図表1 Wi-SUN FANを用いて構築したスマートシティネットワークの例

図表1 Wi-SUN FANを用いて構築したスマートシティネットワークの例

このほか再生可能エネルギー事業者の米アーバングリッド、スペインに本拠を置く多国籍電力会社イベルドローラ、韓国電力などもWi-SUN FANに積極的に取り組んでいるという。

Wi-SUNアライアンスでは、詳細仕様(プロファイル)の策定に加えて、認証プログラムによる相互接続性の確保にも力を入れている。家庭・オフィスでWi-Fiが果たしている役割を「社会インフラ」において担うのがWi-SUNであり、そのためには相互接続性が欠かせないからである。

「250以上の製品がWi-SUNアライアンスの認証をこれまでに受けている。Wi-SUN FANについても、すでに20社以上のベンダーから50を超える製品が市場に出ている」という。

LPWA市場の大半をWi-SUNで吸収できる今回のセミナーで特に多くの聴講者を集めたのがWi-SUNアライアンス共同設立者である京都大学大学院教授の原田博司氏のセッションだ。

原田氏は、Wi-SUNの今後の展開について、電力スマートメーターに実装されているWi-SUN enhanced HANを、水道やガスの共同検針設備として活用しようとする動きが出てきていることを紹介。さらに、世界市場で導入が加速しているWi-SUN FANの機能拡張に言及した。

前出の通り、Wi-SUN FAN 1.1では、最大2.4Mbpsを実現するIEEE標準方式を採用。この標準方式は低速側も従来の50kbpsから12.5kbpsへと拡張するため、今後通信エリアのさらなる広域化も可能になる。さらに「OFDM化により移動性を実現でき、AGVの制御などにも使えるようになる」とのことだ。

原田氏は、こうした進化によって、「LPWAが現在サポートしている市場の大半を、Wi-SUNのエコシステムへ吸収できる可能性が生じる」と見る。Beyond 5G時代に向け、Wi-SUNの活用シーンが、大きく広がることになりそうだ。

本記事で紹介したWi-SUNアライアンスは来たる2022年5月25日~27日に開催されるワイヤレスジャパン2022に出展予定だ。昨年度の出展はなかったが、今年は満を持しての出展で最新の動向などをWi-SUNアライアンス参加各社から直接得られる絶好の機会になるだろう。気になる読者はぜひともスケジュールしておいてほしい。LPWAのなかでも成長が著しいWi-SUNアライアンスの動向から目が離せない。

図表2 Wi-SUN Open House 2022 Winterのセミナースケジュール

13:00
(10 分)
Beyond 5G 時代に向けたLPWA 応用技術と国際標準化の推進 Wi-SUNアライアンス アンバサダー
柏木 良夫
13:10
(15分)
Wi-SUN Alliance Overview and Status Wi-SUNアライアンス プレジデント&CEO
Phil Beecher
13:35
(20分)
Cisco and Wi-SUN FAN for interoperable
and secure field network
Cisco Systems
IoT Standards Manager, Enterprise Networking
Gary Stuebing
13:55
(40分)
Wi-SUN FAN/HANの現状、特徴、および国際標準の観点から見た今後の展開 京都大学 大学院情報学研究科 教授
情報通信研究機構
ワイヤレスネットワーク研究センター 研究統括
原田 博司
14:35
(15分)
無線メッシュネットワークが実現する
マルチ・ ユーティリティネットワーク
アイトロン ジャパン株式会社 代表
大澤 武郎
14:50
(15分)
Smart Cities driving
Sustainability Goals
Silicon Laboratories
Director of Marketing, Industrial and Commercial loT
Abhijit Grewal
15:05 休憩10 分
15:15
(15分)
都市ガス・LPガス・水道スマートメーター用 JUTA Profile の概要と現状 東京ガス株式会社 基盤技術部 次世代技術研究所
遠藤 秀樹
15:30
(15分)
Wi-SUNを活用したユーティリティIoT ランディス&ギアジャパン株式会社 技術統括
高田 純也
15:45
(15分)
スマートメーター・スマートインフラの
Wi-SUN 活用実績とビジョン
ローム株式会社 モジュール事業本部
津和 隆志
16:00
(15分)
スマートメーターに代表されるIoTデバイスのエンド・ツー・エンドセキュリティ WiSeKey SA( ワイズキー)
Asia Pacific Sales Director
宮畑 勝則
16:15
(15分)
最新ソリューション事例のご紹介 株式会社日新システムズ システム・ソリューション事業部
プロダクト開発室 グループ長
和泉 吉浩
16:30
(5分)
クロージング Wi-SUNアライアンス
久米 寛司


<お問い合わせ先>

Wi-SUNアライアンス
E-Mail:info@wi-sun.org , kume@wi-sun.org

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