「○○だけ」では、無線ニーズに応えられない
サイレックスは過去15年ほど、Wi-Fiに傾注して多様な業種向けの無線ソリューションを開発、提供してきた。製造現場や医療現場、そして最近では学校への導入も加速しているという。
そうしたなか、ローカル5Gを事業化し、さらにWi-Fi 6や11ahと組み合わせたソリューション開発を目指す理由と背景について、三浦社長は次のように述べた。
「Wi-Fiを中心に『切れない無線』を追求してきたが、無線デバイスが増えたこと、そしてWi-Fiが届かない場所でも無線が求められるようになった。Wi-Fiだけでは、切れない無線はできない」
組み込み無線のノウハウに長ける同社だが、今後も事業を拡大していくには、「制御された無線通信、Wi-Fiが届かないところも含めたシームレスなカバレッジ、そして、データの特性に応じて手段を使い分けること」が必要だという。これが、免許周波数帯であるローカル5Gと、最新のWi-Fiの混在環境でソリューション開発できるTHE BASEを設立した理由だ。
機器への無線実装だけでなく、空間全体の設計や通信手段の使い分けが必要と三浦社長は語った
2009年からパートナーシップを組むクアルコムと、サンダーコム、富士通とも相互連携しながら、THE BASEを拠点にローカル5Gの組み込み/端末開発を加速させる。
ローカル5G端末開発の現状は?
サイレックスではすでに、組み込み用途のローカル5G端末を開発中だ。
サイレックスで開発中の組み込み用端末
クアルコムの5Gモデムを搭載したサンダーコム製のシステムオンモジュール(SOM)をベースとしたもので、サイレックス独自の映像伝送技術を活用することで、低遅延な映像伝送を可能にした。遠隔で映像を確認しながら機械を遠隔操作するユースケースを想定しているという。
これを映像伝送機器に組み込んで行った実験では、Wi-Fiを用いた場合に比べて伝送遅延を10分の1に短縮。「映像を見ながら機器を操作するには十分な性能が実現できた」(綱嶋氏)
低遅延映像伝送のデモ。映像を見ながら、遠隔でロボットアームを操作する
同氏は、「組み込み用の端末が市場になく、非常に選択肢が少ない状態だ」と、デバイス不足がローカル5G普及の足枷になると指摘した。上記の端末はすでに原理試作が完了しており、これを用いたデモ操作も可能な状態だ。ローカル5Gを導入する工場や物流倉庫をターゲットに、さらに開発を進める。なお、現在はSub6帯対応デバイスのみを開発中だが、将来的にはミリ波対応の開発も予定しているという。
ローカル5Gの実証実験・トライアルは全国各地で行われているが、商用化に向けた課題として「デバイス不足」を指摘する声は多い。THE BASEが、それを解決する拠点となることが期待される。