神明ホールディングス、東果大阪、NTT、NTT西日本、NTTアグリテクノロジーは11月5日、農産物流通DXの共同実験を開始したと発表した。
今回のDXの取り組みにより、「生産者・流通業者・消費者の“三方よし”の儲かる農業、魅力のある農業の実現を目指す」と神明ホールディングス 代表取締役社長の藤尾益雄氏は意気込んだ。神明グループは農産物卸大手で、日本最大級の米卸会社や4つの青果卸売市場などをグループ内に有している。
農業従事者の減少と高齢化、食料自給率の低下など、日本の農業と食が直面する課題を解決するために
必要なのが、「儲かる農業」の実現で、これに貢献するのが今回の取り組みだという
50年変わらない青果流通の仕組みをIOWNでDX「青果流通の仕組みは50年変わっていない」
こう説明したのは、東果大阪で常務取締役を務める森口俊彦氏だ。同社は神明ホールディングスの100%子会社で、大阪市の青果卸売市場、東部中央卸売市場を運営している。
神明グループとNTTグループが共同で取り組む農産物流通DXはまず、この青果流通をターゲットにしている。
森口氏によれば、現在の青果流通には、次のような課題がある。
曲がったきゅうりなどの「規格外品」は、品質には問題ないのに、集荷時の選果作業ではじかれて産地に残り、フードロスにつながる。また、産地からは、需要に関係なく卸売市場に送られてくるため、市場ごとに物の過剰や不足が発生。その結果、市場間での転送という無駄な物流費も生じることなどだ。
日本の青果流通の課題
「生産者は需要情報を持っておらず、単に大きい市場や関係性の深い業者に送るため、流通で無駄なことが起こっている。また、単価の低い農産物は相対的に物流費率が高い。工業製品の物流費が5~10%なのに対して、キャベツ1玉の約22%が物流費だ。工業製品のように、青果流通をマーケットイン型に変えたい」と森口氏は語った。
そのために構築するのが、デジタルツインコンピューティングによる「仮想市場」だ。「Digital Twin Computing for Agriを開発し、フードバリューチェーン全体の最適化を図っていく」とNTT 常務執行役員の川添雄彦氏は話した。
気象情報、交通情報、消費志向の変動など、複数のデータを使って複雑なシミュレーションを行うことで未来予測し、青果流通を最適化できるようにする。
仮想市場のイメージ
オールフォトニクス・ネットワークなどを特徴とするIOWNの技術も活用する。「日本の農業は化石燃料を使ったり、環境負荷が高い。低消費電力のIOWNを使うことでカーボンニュートラルに貢献できる」とNTTアグリテクノロジー 代表取締役社長の酒井大雅氏はIOWNを活用する意義を述べた。