トラフィック急増は、今に始まった話ではない。コロナ禍以前から、ずっと続いてきたことだ。しかしそれでもなお、コロナ禍のインパクトは甚大だったと言わざるを得ない。
通信インフラベンダーのCommScopeによる調査では、北米のケーブルテレビ運営統括会社(MSO)4社の帯域幅消費量に関する次の事実が判明した。
ピーク時間帯における加入者あたりの平均ダウンストリーム帯域幅は、2020年1月から2021年1月の1年間に32.5%も増加した。さらに驚くのは、アップストリームの帯域幅の伸びだ。ダウンストリームを大きく上回る57%の増加となった。これにより、下り:上り比は12:1と、アップストリームの比率が拡大傾向にある。
リモートワーク、遠隔学習、ストリーミングビデオ視聴、オンラインゲームなど、コロナ禍で広まった新しい生活様式の多くは定着した。この帯域幅消費トレンドは、今後も継続することになる。
CATV事業者はトラフィックの増加に対応するため、これまでもネットワークインフラの増強を繰り返してきた。だがコロナ禍による急増、とりわけアップストリームの急激な増加という新しいトレンドに直面した今、新たなアーキテクチャを用いて補完していく必要性が高まっている。
DAAの多大なメリットその次世代アーキテクチャとして、かねてより期待されてきたのが「分散型アクセスアーキテクチャ(DAA)」である。
現在主流のCMTSやi-CCAPのような集中型アクセスアーキテクチャでは、ヘッドエンド機能がCATV局舎内に設置され、局舎から加入者宅まではアナログオプティクスで伝送する。このためノイズの影響を受けやすく、使用できる帯域幅は減少する。局舎のラックスペースや消費電力も大きな問題だ。
これに対して、DAAは「分散型」とある通り、ヘッドエンド機能を加入者宅近くのアクセスノードへ分散配備する。これによる効果は、局舎から加入者宅近くまでの経路がデジタル化されることで、使用できる帯域幅が拡大することだけではない。局舎の省スペース化、省電力化も実現される。
ところが、こうした大きなメリットがあるにもかかわらず、DAAの採用はそれほど進んでこなかった。CATV事業者には最近まで、二の足を踏まざるを得ない理由があったからだ。