5Gコアで複数の無線を一元管理ここまで有線によるOT・IT融合について見てきたが、無線の高度化による融合の動きも見られる。
パナソニックが4月に提供を開始した「現場マルチネットワークサービス」は、LTEのコア装置(EPC)へのネットワーク統合によるマルチアクセス制御を1つの特徴とする。
具体的には、EPCで複数のPLMN(公衆陸上移動体通信網)番号の認証を行うことにより、自営等BWAとsXGPそれぞれのSIMを認証しネットワークの統合管理が行える。
同サービスは、2022年4月にローカル5Gと5Gコア(5G C)への対応も予定しているが、独自開発により、LTE/5Gに加えて、Wi-FiのようにSIMを搭載しないネットワーク機器も5G Cで認証を行うことができる。複数のネットワーク制御を一元化することで統合的に運用しつつ、通信方式が異なる端末ごとのQoS制御も可能になるほか、ネットワークの運用管理コストが低減されるという。
マルチアクセス制御により、例えば製造現場では、敷地内をsXGPでカバーしたうえで、PCやスマートフォン用のネットワークとして工場内にWi-Fiを敷設し、高精細映像による作業の可視化や業務用ロボットの遠隔操作など低遅延性が要求される用途にはローカル5Gを活用するといった使い方を1つの管理プラットフォーム上で実現可能になる(図表4)。
図表4 「現場マルチネットワークサービス」によるデータ連携のイメージ
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パナソニックは自社工場において、無線化による機動力向上や業務効率化に向けた実証を行っているが、「カメラ映像による現場の可視化やウェアラブル端末を使った業務効率化には必ずしもローカル5Gが必要というわけではない。Wi-Fiでも十分対応することができる」とパナソニック システムソリューションズ ジャパン パブリックシステム事業本部 システム開発本部ネットワークサービス事業センター長の野口太一氏は語る。
その一方、AGV(無人搬送車)やフォークリフトの遠隔操作については、ローカル5Gが必要になるという。さらに、無線ではカバーしきれないのが工作機械や実装機の制御だ。0.1ms単位などの超低遅延性が要求されるため、ローカル5Gでも対応できず、産業用イーサネットが用いられる。「データ容量が限られていたり、省線化による機動性が向上する用途は有線から無線に置き換えられるが、工作機械などの制御にはまだまだハードルが高い」(同センター ネットワークマーケティング部 マーケティング課長の落合真司氏)。少なくとも当面は、無線と有線の併存が“最適解”となる。