インターネットに「4つのイノベーション」を
Internet for the Futureの発表からおよそ1年半が経過した2021年春、シスコはこのコンセプトをさらに具体化した「Internet for the Future 2.0」を打ち出した。「この技術戦略を具現化するソリューションが出揃い、実際にSPへの導入検討も始まっている。さらに、光ネットワークの領域でイノベーションを起こすための技術を持った企業の買収も進んだ」と高橋氏。「2.0」は、シスコのSP向けソリューションにおける新たな開発戦略として位置付けられるという。
シスコシステムズ アーキテクチャ事業 シニアプロダクトセールススペシャリストの大塚真也氏
この新・開発戦略において、シスコが新たに提唱しているのが、IPとオプティクス(光)のレイヤを統合した「Routed Optical Networking」だ。サービスプロバイダー アーキテクチャ事業 シニアプロダクトセールススペシャリストの大塚真也氏は、「IPと光を融合させた、新しいネットワークデザインが可能になってきている」と語る。その効果は目覚ましく、試算によれば、Routed Optical Networkingアーキテクチャの採用によってSPは40%超ものTCO削減が見込めるという。
では、シスコはどのようにして「インターネット エコノミクス」を再定義しようとしているのか。具体的な道筋として、シスコはネットワークの世界に4つのイノベーションを起こそうと、「シリコン」「オプティクス」「ソフトウェア」「システム」の4領域で技術革新を進めている。
シスコが目指す4つの技術革新
各領域の具体的な取り組みについて見ていこう。
ASICを革新する「Cisco Silicon One」
第1の「シリコン」領域では、シスコ独自のアーキテクチャに基づくASIC「Cisco Silicon One」を開発し、これを搭載したルーター製品を2020年から提供している。同年後半には第2世代チップもリリースし、キャリアネットワークやデータセンターネットワークで使われるルーター、トップオブラックなど幅広い用途をカバーするラインナップを揃えている。
Silicon Oneの特徴は大きく2つある。1つは、最大で12.8Tbpsというトラフィック処理能力を備えることだ。1チップで圧倒的に多くのトラフィックを処理できれば、機器点数を削減してネットワークの複雑性を解消するとともに、消費電力も低減できる。
もう1つは、同種のチップで多様な用途に対応できる点だ。通常、ASICの開発はスイッチング用とルーター用とで異なるが、「Silicon Oneは両方の用途に展開できる」(大塚氏)。かつ、小容量ルーターにも適した3.2Tbpsや6.4Tbpsのラインナップを揃えることで(下画像)、「ネットワークの様々な箇所で同じアーキテクチャを使えるようにしている」。
Cisco Silicon Oneの開発ロードマップ(クリックして拡大)
高橋氏によれば、この方向性こそSilicon OneがSPから大きな支持を得ている理由だという。「キャリアネットワークの中で、アクセスにもエッジにもコアにも同じアーキテクチャ、ソフトウェアが使えるという点にメリットを感じていただけている」
シスコは現在もSilicon Oneの開発を進めており、2021年末には1チップで25.6Tbpsものスイッチング容量を持つ新世代チップをリリースする計画だ。8Tbpsモデルの追加によって、バリエーションもさらに拡充する。