<特集>ワイヤレスIoT最新動向Amazon Sidewalkの狙い アマゾン独自の無線通信

2019年秋にアマゾンが発表した無線通信プロトコル「Amazon Sidewalk」(以下、Sidewalk)。2020年9月に詳細が発表され、2020年末には米国で一部ユーザーを対象に提供が始まった。日本国内での正式なアナウンスはまだないが、現時点で判明している情報を基にアマゾン独自規格の特徴と狙いを整理しよう。

同社のホワイトペーパーによれば、Sidewalkは900MHz帯やBluetooth Low Energy(BLE、2.4GHz帯を使用)を用いて通信する。900MHz帯については、LoRaおよびその他の周波数偏移変調(FSK)を使うとしている。目的は、Amazon Echoをはじめとするスマートデバイスを用いる際にWi-Fiを補完し、その圏外でも携帯電話ネットワークを使わずに接続できるようにすることだ。

通信速度や通信距離などの詳細なスペックは述べられていないが、“Wi-Fi圏外の接続性”を目的とし、後述するように帯域幅を制限していること、用途としてEchoデバイスの設定やアップデートが挙げられていることなどから、BluetoothやLPWAに似た使い方を想定しているものと思われる。

コミュニティで帯域を共有通信の仕組みもLoRaに似ている。

Sidewalk対応デバイスがアプリケーションサーバーと通信する際には、下図表のようにNetwork Serverを経由する。家庭に置かれるEchoや防犯カメラが無線通信の中継機「Sidewalk Bridge」(図中ではSidewalk Gateway)として機能し、家の外も含めた広範囲な接続を実現する。アマゾンは、Echoのほか米Ringの家庭用防犯カメラ「FloodlightCam」「Spotlight Cam」もSidewalk Bridgeとして使えるとしている。

図表 Amazon Sidewalkの通信のイメージ

図表 Amazon Sidewalkの通信のイメージ
出典:Amazon Sidewalk Privacy and Security Whitepaper

Wi-Fiを補完する具体的な利用イメージとしては、何らかの理由でWi-Fiがダウンしたときでも防犯カメラから動作検知によるアラートを受信し続けることができる、Wi-Fiが届かない私道のスマートライトに接続するといった使い方を挙げている。また、BLEを使って鍵や財布等につけたタグの在り処を特定する探し物トラッカー「Tile」とも提携。近所に置き忘れた鍵や財布を見つけるといった使い方もできる。

将来的には、Sidewalk対応の照明・セキュリティ製品、家電の状態を確認し、不具合を解消するリモート診断に用いる計画もあるようだ。

また、アマゾンが示したSidewalkのビジョンには、「隣人との帯域幅の共有」も述べられている。ユーザーは、コミュニティで共有するSidewalkネットワークに参加することで、自宅から離れた場所にあるSidewalk対応デバイスにもアクセスできるようになる。“歩道”の名の通り、家庭内に留まらず、道端にあるSidewalk BridgeやIoTデバイスを活用して多様なスマートシティソリューションを展開するのがアマゾンの狙いと言えるだろう。

こうした共有を可能にするため、Sidewalkには厳格なセキュリティと、帯域幅制限の仕組みも実装されている。Network ServerがデバイスIDを使った認証を行い、やり取りされるパケットは3レイヤーで暗号化してプライバシーを保護。また、特定ユーザーのSidewalk通信が他者に大きな影響を及ぼさないよう、Sidewalkデバイスから収集するデータ量と使用帯域幅には上限が設けられている。Network Serverが通信状態をモニタリングし、上限を超えないよう制御する。

もちろん、Echoのユーザーは、Sidewalkネットワークへの参加(Sidewalk Bridgeの機能)をオフにすることも可能だ。

アマゾンは赤十字社と協力し、Sidewalkを使って血液採取・供給の追跡を行うPoCも行っている。そうした産業界での使用例が増えれば、一気に普及が進む可能性も十分にある。

月刊テレコミュニケーション2021年2月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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