2019年5月に稼働を始めたインターネットイニシアティブ(IIJ)の新データセンター「白井データセンターキャンパス(白井DCC)」。敷地面積4万㎡にも及ぶこの新拠点の一角に2020年11月9日、白井ワイヤレスキャンパスがオープンした。同社のR&D、および産官学の共同開発の成果を発表する場であるとともに、顧客企業やパートナーとの実証実験、端末や通信機器等の製品検証など様々な用途に活用する。
この白井DCCはIIJの新サービス開発における実験場として位置づけられ、開設当初から屋内外に無線基地局を設置し、これまでも無線通信技術を使った実証実験が行ってきたが、今回その成果を実際に“体験できる場”として白井ワイヤレスキャンパスを公開。現時点で以下の6つのデモを用意している。
1)プライベートLTEとパブリックLTEの自動切替
2)プライベートLTEを利用した警備ロボットの遠隔監視と制御
3)Wi-Fi6
4)IoT向け無線通信技術である「LoRaWANR」
5)ローカル5GSA(StandAlone方式)を模した有線接続による映像伝送
6)セルラーLPWA(LTE-M)とSoftSIM
報道陣を対象に体験ツアーが実施されたので、その一部を紹介しよう。
今回、デモ展示等の内容を解説した
IIJ MVNO事業部 ビジネス開発部
ビジネス開発課 シニアエンジニアの東俊孝氏
プライベートLTEでアルソックの警備ロボットを制御
白井DCCのエントランスでは、ALSOKのコミュニケーションロボット「REBORG-Z(リボーグゼット)」が来訪者を出迎える。空港や銀行、ショッピングモールなどでも活用されている警備・案内用ロボットだ。通常はWi-Fiによってセンター側と通信するが、ここ白井ワイヤレスキャンパスではプライベートLTEを使って遠隔から監視・制御し、巡回監視や来訪者のアテンド業務を行っている。
警備・案内ロボットREBORG-Zと、ラボ内のsXGPアンテナ
プライベートLTEの通信方式には、1.9GHz帯を用いるsXGPを採用している。センター側からロボットへ巡回指示を出し、ロボット側からはカメラで撮影した映像を伝送。屋内移動時には自動ドアの開閉やセキュリティゲート通過も自動で行い、屋外にあるゲートの施錠確認なども可能だ。
sXGPで使える周波数幅が現時点では5MHz幅と狭く、通信速度は下り8Mbps/上り4Mbps。高精細映像をなめらかに伝送することはできないが、施設監視業務であれば秒間数コマの画像伝送でも事足りる。
ロボットの管理画面。右側にはREBORG-Zに搭載されている
カメラで撮影した映像が表示される(セキュリティの都合上、画像はぼかしている)
それよりも、Wi-Fiに比べて電波の到達範囲が広いsXGPを活用することで「1台の基地局(AP)でラボ周辺の広範囲をカバーできる」ことが大きなメリットだと、MVNO事業部 ビジネス開発部 ビジネス開発課 シニアエンジニアの東俊孝氏は話す。Wi-Fiを使う場合は数台のAPを設置する必要があり、設置・運用コストが嵩む。また、「AP間をハンドオーバーする際に電波が途切れたりする問題も起きる」(同氏)。sXGPにすれば、それらを一気に解消できるのだ。