LTE/5Gの周波数シェアリングの効果とは
野崎氏によると、ESSを導入済みのキャリアはすでに16社にのぼり、セル数も10万を超えているという。同一セル内にいる4Gと5Gユーザーの比率が変化するのに合わせて、周波数リソースを動的に両者に割り当てることで利用効率を最大化。「5Gの比率をミリ秒単位で検出する」ことで、それを実現しているという。
実は、LTE帯域の5G NRへの転用については否定的な見方も少なくない。3.5GHz帯や28GHz帯といった5G専用帯域を使う場合に比べて「スループットが出ない」こと、5Gにリソースを使うことで「4G側の通信性能が落ちる」ことの2つが主に懸念されている。特に前者については、名ばかりの5Gという意味で、“なんちゃって5G”とも揶揄されている状況だ。
ESSは、こうした懸念を払拭するのにも貢献できるという。前述のようなダイナミックな制御により4Gへの影響を最小限に留められるからだ。
北米キャリアで先行導入されている技術群
(エリクソン・フォーラム2020「5Gネットワーク世界動向」セッションの資料より抜粋)
また、複数の帯域を束ねる「キャリアアグリゲーション(CA)」技術と併用することで、「3.5GHz帯が使えるエリアも広がる」という。伝搬特性に優れるLTE帯域を用いることで、スマートフォン側で5G NRを捕まえやすい環境が作れるためだ。実際、3.5GHz帯の下り通信において、エリアが25%拡張し、CAによってネットワーク容量も27%向上するといった効果が得られているという。
野崎氏は、米韓や欧州、中国などで得られた「こうした知見を、今後日本のお客様にも提供していきたい」と述べた。いよいよ2021年からSA移行、LTE帯域のNR化が始まる日本でも、そのノウハウと技術が生かされそうだ。