「映像と音声、そこに触覚が加わればVR(仮想現実)やAR(拡張現実)、これらを組み合わせたMR(複合現実)はよりリアルな体験になる」。帝人 スマートセンシング事業推進班 技術開発チーム リーダーの山田順子氏はこう触覚通信について語る。
帝人 スマートセンシング事業推進班 技術開発チーム リーダーの山田順子氏
人間は物に触れれば、それが鉄のように硬いのか、スポンジのように柔らかいのか、風船のように弾力があるのかを感じ取れる。逆に、こうした触覚なしに物に触れたとすると、力の加減が分からず、変形や破壊などを引き起こしかねない。
高速大容量、低遅延を実現できる5Gが登場した今、これを活用した遠隔操作への期待がふくらんでいる。すでに実用化している遠隔操作の1つに、米インテュイティヴ・サージカル社の内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」による遠隔手術があるが、このダヴィンチを含め、今の遠隔操作は視覚ばかりに頼っている状況だ。人間が行う様々な作業においては、触覚も重要な役割を果たしており、触覚通信の実用化に成功すれば、遠隔操作の可能性は大きく広がる。そこで近年、触覚通信への注目があらためて高まっている。
例えば、NTTドコモと日鉄ソリューションズ(NSSOL)は2020年1月、ロボットが感じた触覚を遠隔地のオペレーターへ伝えられる遠隔操縦ロボットを共同開発したと発表した。5Gを介して、硬さや柔らかさ、重さや軽さなどの触覚を伝送できるという。