LTEをグレードアップさせる新技術が盛りだくさん2014年実用化の「LTE-Advanced」を徹底解説

1Gbpsの高速通信を実現する4G規格「LTE-Advanced」の仕様が年内に固まる。まずは伝送容量拡大や孤立周波数の有効活用を可能にするLTEの改良版として2014年頃から導入が広がりそうだ。

孤立帯域の活用も

CAの採用は、LTE-Advancedのより柔軟な展開を実現するのにも寄与している。なぜなら、同一帯域内だけでなく、例えば2GHz帯と800MHz帯など異なる帯域で運用されている搬送波も束ねて使えるためだ。

LTE-Advancedの能力を生かすには40MHz幅以上の帯域幅が必要と考えられている。だが、通信事業者にとってこうした広い周波数帯が確保できるチャンスは決して多くない。複数の周波数帯を1つの帯域として使えるCAを活用することで、より多くの事業者に40MHz幅以上の帯域幅を確保できるチャンスが生まれるのである。

さらに、NECのモバイルネットワーク事業本部主席技師長の宮原景一氏は、CAにはもう1つ重要な点があると指摘する。「離れた帯域を束ねられるだけでなく、上り1波、下り2波の搬送波を束ねるような非対称での運用を行うことできるので、ペアバンドの取れない孤立帯域を下り側に束ねて有効活用できる可能性もある」というのだ。インターネットアクセスなど、データ通信サービスでは下り側の高速化ニーズのほうが高いため、これにより帯域の有効活用が図れるのである。「これはLTE-Advancedの目に見えるセールスポイント」と宮原氏は話す。

図表4 キャリアアグリゲーション(CA)の導入イメージ
図表4 キャリアアグリゲーションの導入イメージ

セルエッジ対策に注力

さらなる高速・大容量化を実現するLTE-Advancedであるが、移動通信インフラ世界トップのエリクソンで北東アジアCTOを務める藤岡雅宣氏がそれ以上に大切な点として挙げるのは、「平均スループットの向上、特にセルエッジでの速度向上に力が入れられていること」だ。

LTEやWiMAXなどのOFDMベースの無線システムは耐干渉性能が高く、隣接セルで同一周波数を使うことができるが、セルの境界部分では大きく速度が低下する。これがデータ容量を確保するうえでのネックとなっていたが、LTE-Advancedはこのセルエッジ問題の解決策となる機能を多く盛り込んでいるのである。

代表的なものが、隣接基地局間で情報をやりとりし動的に干渉回避を図るCoMP(多地点協調送受信)だ。

また、同じくリリース10の仕様に含まれている(1)通常の基地局のカバーエリア(マクロセル)内に、マイクロセルを配置するヘテロジニアス(階層型)ネットワークや、(2)不感地対策などで用いられているリピーターに基地局と同様の機能を持たせる「レイヤ3リレー」などもCoMPと組み合わせることで、セルエッジ対策に活用できるという。

このほか、CAやビームフォーミングを適用するマルチユーザーMIMOなどの技術も容量拡大に貢献する。こうした多彩な技術の追加で、データ容量(周波数利用効率)の拡大を図ることが、LTE-Advancedのより現実的な狙いといってよいだろう。

月刊テレコミュニケーション2010年10月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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