勘に頼らない配送が可能に 割引きプランの策定もアズビル金門がガスミエールの提供を開始してからまだ半年余りだが、奥野氏によると、「導入する事業者は右肩上がりに増えている」という。
どのような点が、LPガス事業者に支持されているのか。
まず、1日に1回という高い頻度でデータを収集できるので、利用状況や残量の詳細な把握が可能になる。これにより、業務エリア内における配送ルートが最適化され、配送業務を効率化することができる。
従来、LPガス容器の配送業務は、契約者の1カ月間の使用量の傾向から容器内の残量を推測し、定期的に配送・交換を行ってきた。しかし、配送員の“勘”に頼る部分が多く、まだ十分残っているのに配送してしまうといったムダが生じていた。「ガスミエールは詳細なデータに基づいて予測するので、勘に頼る必要がなくなり、未熟練者でも的確に配送業務を行える」(奥野氏)という。
集まったデータはクラウド上に保存されグラフで可視化されるため、収益状況の把握や売上の予測・分析も簡単にできる。毎日の検針値データから見えてくる利用者の使用実態を基に、料金プランや割引プランを策定したり、新たな器具販売に活用するといったことも可能になる。
ガスミエールは有線の検針システムのような初期費用がかからず、毎月の通信費用も安価だ。「検針員や配送ドライバーの人件費と同等か、さらにコストを抑えて自動化を実現する点も評価されている」(奥野氏)。
ガスミエールは、利用者の利便性向上にも一役買うことができる。
目視による検針では、ガス漏えいなどでガスメーターが遮断した際、緊急アラーム情報をガス事業者は受け取れず、利用者からの連絡を受けた後にしか対応することができなかった。
これに対し、ガスミエールは緊急アラーム情報をクラウドで受け取り、あらかじめ指定しておいたメールアドレスやSMS、FAXへ転送できるので、ガス事業者が早急に対応策を講じることが可能だ。先述のように、利用者からの連絡を受けて事業者が遠隔からガスを遮断・復帰することができるので、消し忘れの不安も解消される。
また、ガスの使用量を常時把握できる機能を、離れて暮らす高齢者など家族の安否確認に応用することも考えられるという。
クラウドによるデータ連携 電気や水道と組み合わせ新サービス同様の自動検針システムは他にもあるが、「ガスミエールは様々なクラウドシステムとのデータ連携を容易に行えるのが他社にはない強み」と奥野氏は述べる。
アズビル金門は2019年11月より、親会社のアズビル、電力機器などの開発・生産・販売を手掛ける東光高岳、東光東芝メーターシステムズの4社で、LPガスだけでなく電気や水道など各種メーターから収集したデータを組み合わせ、新たなサービスを創出する「as a Serviceモデル」に取り組んでいる(図表2)。
図表2 新たなサービスを創出する「as a Serviceモデル」イメージ
LPガスは、給湯器やコンロなど用途ごとの使用量がほぼ一定しており、検針データを見れば、その家庭の使用状況や家族構成などが分かるといわれる。そこに電気や水道のデータも加われば、より詳細な状況を把握することができる。アズビル金門では、これらのデータに、気象や行政統計、各種センサーなどのデータを掛け合わせることで、災害対策や防犯対策、消費予測などの新たなサービスにつなげるデータプラットフォーム構想を掲げる。
「データを持ち寄ることで、これまでライバル関係だったLPガス事業者と手を組む可能性もある」と奥野氏。データ連携を契機に、中小事業者も巻き込み、LPガス業界に自動検針を広めていこうとしている。
<お問い合わせ先>
アズビル金門株式会社
経営企画部広報グループ
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K-SMα、ガスミエールはアズビル金門の商標です。