クラウドシフトが加速するなか、企業ITにおける位置付けと役割が大きく変わり始めているのがデータセンターサービスだ。2000年からデータセンター事業を営むアット東京は2016年、これからのデータセンターのあるべき姿を見据えた新ビジョンを打ち立てた。「堅牢さだけでなく、ネットワークに強いセンターになろうと戦略的に取り組みを進めてきた」とプロフェッショナルサポート部長の杉山智倫氏は語る。
アット東京 プロフェッショナルサポート部長の杉山智倫氏
目指したのは、インターネットの集積拠点になることだ。広大なスペース、堅牢なファシリティといった従来からの強みに加えて、国内外の多くの通信事業者のPOPが設置され、日本の3大IX(JPIX/BBIX/JPNAP)も拠点を構える利点を活かして、増大する「コネクティビティ」のニーズに応える。
もう1つのカギがクラウドだ。
様々なクラウドを使うユーザーがアット東京を経由してつながりあう──。そうした「クラウドとリアルな世界をつなぐトラフィックが通る拠点として、信頼性の高い接続サービスを提供していく」ことを、データセンターの新たな役割として位置付けた。
これを実現するためアット東京は、IBM CloudのPOPを皮切りにAWS、Google Cloud PlatformのPOPを誘致。Microsoft Azureとの接続も含め、ますますニーズが高まるクラウド閉域接続サービスを充実させてきた。
優先すべきは「シンプルさ」 センター内でメガクラウドに接続そもそも、クラウドに接続するためのネットワークはどう作ればいいのか。杉山氏は次の点をキーポイントに挙げる。「経路、レイテンシーとコストの観点で最も適切な構成を考えること。特に大事なのがシンプルさだ」
クラウドにはインターネット経由でもつながるが、その場合は様々なIXや通信事業者を経由し、上り下りの経路も非対称になることもある。「昔はそれでも良かったが、クラウドの使い方が変わり、重要なデータをクラウドに置く場合は拠点との間のネットワークをどうシンプルにするかが重要になる」と話すのは、ソリューション本部 ネットワークサービス部長の小浦場恒人氏だ。
アット東京 ソリューション本部 ネットワークサービス部長の小浦場恒人氏
クラウドシフトが進むと、物理的なサーバーのロケーションも簡単には把握できなくなる。ネットワークが複雑だと故障時の切り分け、原因・影響範囲の特定が難しくなる。通信事業者やクラウドエクスチェンジなど多数のプレイヤーを経由した場合、どこかで障害が発生した場合の影響を把握することは非常に困難だ。
アット東京が提供する「Cloud Direct Connect Pack」は、まさにこの課題を解消するサービスだ。「お客様拠点とオンプレミスデータセンター、クラウドが混在して使われるなかで、最適な構成を考えて作った」と杉山氏。図表1の通り、アット東京データセンター内のルータを核としたスター型の構成を取ることで通信ルートを最適化。センター内に集積しているメガクラウドのPOPへ最短経路でシンプルに接続できるため、遅延のない安定した通信が行えるうえ、コストも最適化できる。ラックを契約すれば、オンプレミスサーバーやデータベース等の持込も可能だ。
図表1 Cloud Direct Connect Packの利用イメージ