電力線を使ってデータ通信を行う「HD-PLC(高速電力線通信)」。国内では集合住宅のスマートメーターへの採用など、徐々に用途が拡大している。2019年は2つの動きが契機となり、さらに弾みがつく可能性が高い。
1つめの動きが、同年春に第4世代「HD-PLC」技術がIEEE1901aとして規格化されることだ。
現行の第3世代との違いは、1つのLSIコアで、用途に応じて5段階に通信速度や距離を切り替えられる点にある。
標準モードの最大通信速度は240Mbpsと第3世代と変わらないが、2倍モードにすると500Mbps、4倍モードでは主に同軸線利用時という条件付きながら、1Gbpsの高速データ通信を実現する。これにより、4K/8Kの超高精細映像や監視カメラのような大容量データの伝送にも利用可能となる。
他方、2分の1モードにすると約1.5倍、4分の1モードにすると約2倍まで通信距離を延ばすことができ、ビルのエネルギー管理や照明制御など、通信利用帯域の狭帯域化が必要な用途に適する。
5Gでは28GHz帯など高い周波数帯が用いられるが、直進性が高い分、電波が届きづらいことが懸念される。そこでビル内や地下など電波の不感地帯はPLCで補完する方法が考えられるという。
図表 第4世代「HD-PLC」技術の概要
第4世代「HD-PLC」は別名「IoT-PLC」と呼ばれるように、IoT向けを想定している。「IoTにおけるネットワークのニーズは、高速化と長距離化に二分される。第4世代『HD-PLC』はそのどちらにも対応することができる」とパナソニック ビジネスイノベーション本部 事業戦略センター HD-PLCプロジェクト プロジェクト長(兼)全社推進統括の荒巻道昌氏は話す。
「HD-PLC」は、電源のあるところであれば簡単にネットワークを構築できるうえ、通信の安定性や電力消費の効率性にも優れる。そのため、IoT向け通信規格として近年再び注目を集めていた。さらに第4世代「HD-PLC」がIEEEで標準化されれば、ベンダー各社からLSIが発売され、普及拡大が大いに期待できるという。