先端シェアオフィスのICT活用法――三井不動産の「WORKSTYLING」

サテライトオフィスなど、働く場を“社外”に整備する動きが広がっている。安全かつ快適に働ける環境を実現するには、どんな仕掛けが有効なのか。三井不動産が展開するシェアオフィスのICT活用法を紹介しよう。

WANとWi-Fiはクラウドで管理こうしたセキュリティの仕組みも合わせてワークスタイリングのネットワーク構築を担ったのがインターネットイニシアティブ(IIJ)だ。ファイアウォールやリモートアクセス等の機能をクラウド型で提供する同社のネットワークサービス「IIJ Omnibus」を利用して全国の拠点を接続。拠点内にはIIJのマネージドWi-Fi「@WiFi」を採用した。いずれも拠点の拡大・縮小に対応しやすく、かつ各拠点のインターネットアクセス/WAN、セキュリティ、Wi-Fiをクラウドで一元管理できるのが利点だ。

なお、今年4月に開始したFLEXについてはプロバイダーを分けており、NTTコミュニケーションズのWANサービスを採用している。契約人のネットワークポリシーに応じてネットワーク機器持ち込みの希望があった際には、そのマウントができるよう環境構築をしている。

一方、物理的なセキュリティに関しては、各拠点にコンシェルジュを常駐させて有人管理を行っている。SHAREの利用者は入退場の際にスマホアプリのQRコードを読み取り、利用状況を管理する仕組みだ。

また、すべての拠点に監視カメラを設置しており、通路やオープンスペースの状況を常時モニタリングすることが可能だ(個室や会議室内は撮影していない)。トラブル発生時にはその映像を検索・閲覧もできる。今年9月の北海道地震の際には、東京から札幌拠点の様子を確認し、早期に営業再開の判断が行えた。

この監視カメラシステムもクラウド型だ。三井不動産が出資するクリューシステムズが提供している「SeeIT」を使っており、全拠点の映像を遠隔から一元的に監視できる。カメラ内のSDカードに映像を蓄積し、クラウドを経由して見たい映像のみを抽出できる仕組みであるため、通信データ量とコストが抑えられる。

個室の入退管理にスマートロック4月に開始したFLEXの入退室管理にはスマートロックを導入した。

FLEXは、「平日8~21時」と利用時間が決まっているSHAREと異なり、利用者が選んだスペースに24時間いつでも入退室できる。この管理を効率的に行うために採用したのが、フォトシンスが提供する「Akerun入退室管理システム」(以下、Akerun)である。

AkerunはスマートフォンやSuica/PASMO等の交通系を含む各種ICカードを鍵として使うことが可能で、クラウド上の管理システムから合鍵を作成して発行し、誰がいつどこに出入りしたかを記録できる。導入の容易性も特徴の1つで、電子錠とリーダーを、ドア内側のサムターンとその付近に貼り付けるだけで設置が可能だ。電子錠とリーダーはBluetooth Low Energy(BLE)によって、拠点内LANに設置したゲートウェイ装置「Akerun Remote」と接続するため、配線が不要であり、個室のレイアウト変更への対応も容易だ。

FLEX個室の入退室管理のために導入した「Akerun入退室管理システム」。既設のドアに後付でき、面倒な工事が不要なこと、設置場所の異なる複数の鍵をクラウド上で一括管理できることなどがメリットだ
FLEX個室の入退室管理のために導入した「Akerun入退室管理システム」。
既設のドアに後付でき、面倒な工事が不要なこと、
設置場所の異なる複数の鍵をクラウド上で一括管理できることなどがメリットだ

Akerunを採用した最大の理由は、運用のシンプル化だと田口氏は話す。

FLEXの利用者は、①ビル入口のセキュリティゲートを通り、ビルの共用部から②FLEXエリアに入館した後、③FLEX個室に入る。①と②はビルのカードシステムが使えるが、FLEXスペースにもそれを適用するとコストが嵩むうえ、FLEX拠点ごとに管理方法が異なってしまう。かといって、FLEXスペースの入退管理のために別のセキュリティシステムや物理的な鍵を使うと、鍵/カードの受け渡しやログデータの管理に手間がかかる。

Akerunは、その中間的な運用を可能にする。ビルのセキュリティカードにFLEXスペースの鍵を発行できるので、ユーザーは①から③まで1枚のカードで済む(図表2)。ワークスタイリング側も、異なる拠点のFLEXスペースをAkerunの入退室管理システムで一元管理できる。「ビルのカードシステムやスタンドアロンのシステムとは異なり、クラウドですべてのFLEX拠点を管理できるので、手間がかなり減る。かつ初期費用・ランニングコストともに安かった」と田口氏は話す。

図表2 ビルのセキュリティカードとの一体運用
図表2 ビルのセキュリティカードとの一体運用

月刊テレコミュニケーション2018年11月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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