浅草から地下鉄で1駅の場所にある東京・蔵前は、玩具や文具の問屋が数多く立ち並ぶ下町だ。最近は洒落たカフェや雑貨屋などが次々にオープンしており、「東京のブルックリン」と呼ばれることもある。
その蔵前に今年6月、エッジコンピューティングを活用したAI/IoTビジネスの共同実証環境がオープンした。NTT東日本がNTT蔵前ビル内に開設した「スマートイノベーションラボ」である。
スマートイノベーションラボのあるNTT蔵前ビル
今年6月に就任したNTT東西の新社長は成長戦略の1つとして、「通信ビル」という資産の活用を揃って打ち出している。すなわち、エッジコンピューティングビジネスの推進だ。
NTT東日本の通信ビルは、東日本エリアにおよそ2000もあり、堅牢性にも優れる。エッジコンピューティングのためのコンピューティングリソースの設置場所としては非常に有望だ。AI/IoT時代に本格突入し、エッジコンピューティング市場が立ち上がることになれば、大きなビジネス機会が期待できる。
もちろん今はまだ、それはただの“可能性”に過ぎない。その可能性が“現実化”するためには、様々なチャレンジが必要になるだろう。NTT東日本 ビジネス開発本部 第一部門 基盤ビジネス推進担当 担当部長の黒澤大志氏は次のように語る。
「何をすれば、エッジコンピューティングはありがたいのか。また、そのネットワークにはどういう要件が求められるのか。これまでのNTT東日本であれば、『我々が答えを知っている』という前提でサービスを開発していた。しかし、今回はその前提を捨てる必要がある。答えは分からないからだ」
そこで「まずはやってみよう」と設立したのが、スマートイノベーションラボだという。
スマートイノベーションラボ内に用意している、パートナー企業が検証や議論を行うための
ワーキングスペース「スマートイノベーションルーム」。プレゼンや共同作業、打ち合わせ、
個人作業などの目的別に部屋が用意されている
現時点では、埼玉県、SOMPOホールディングス、博報堂DYホールディングス、ベンチャー企業のDVERSEの4者が共同実証のパートナーとして公表されている。また、黒澤氏によれば、この他にもいくつかのパートナーとのディスカッションがすでにスタートしているという。
NTT東日本がパートナーと共同で取り組み始めたエッジコンピューティングの“答え探し”――。その現状をレポートする。