<特集>映像IoTAI予測で「混まないレジ」――大手スーパー、ベイシアの店舗革命

スーパーの買物客が最もストレスを感じるレジ前の混雑。それを、AIの映像解析によって解消するシステムを導入したのがベイシア三好店だ。顧客満足度の向上に加え、業務効率化にも貢献している。

週末には1日平均6000人もの買い物客で賑わう総合スーパー「ベイシアスーパーセンター三好店」(愛知県みよし市)。店内に20台ほど並ぶレジの近くには、レジ精算の様子を見守る1人のスタッフがいる。

彼女の役割は、レジの開局台数を調整して混雑を未然に防ぐことだ。混みそうなら、レジ前の行列が伸びる前に応援スタッフを呼び、混雑が解消すれば閉局して元に戻す。いわば“司令塔”だ。

無駄な開局をなくして人の手配を適正化しながらも、お客さまは待たせない――。その判断には高い経験値とノウハウが必要だ。

映像IoTを活用した「レジ混雑予測」を2017年から導入しているベイシア 三好店
映像IoTを活用した「レジ混雑予測」を2017年から導入しているベイシア 三好店

ベイシアは“スーパーセンター”と呼ぶ大型店を中心にこうした司令塔役を配置しているが、三好店には1つ、他の店舗と違う点がある。この判断を助ける心強い“アシスト役”がいるのだ。レジ混雑を予測してくれるAIである。15分後、30分後に必要となるであろう適正レジ台数の予測が、彼女の持つスマートフォンに届く。「現在7台、15分後の推奨は9台、30分後8台」といった具合だ。

一般的なスーパーマーケットでは、レジ前に行列ができてから慌てて応援を呼ぶが、三好店では司令塔役と予測AIの活躍によって、混雑前に応援レジを開けて混雑を未然に防いでいる。

AIが15分後、30分後のレジ混雑を予測した結果が、レジ前のスタッフが持つスマートフォンに届く
AIが15分後、30分後のレジ混雑を予測した結果が、
レジ前のスタッフが持つスマートフォンに届く

映像から入店数とレジ列を把握このレジ混雑予測を実現しているのが、OKIの店舗業務改善支援ソリューション「VisIoT(ビショット)」だ。カメラ映像内の人物を検知して、人数カウントや属性(性別・年齢)判定等ができる同社の映像IoTシステム「AISION(アイシオン)」をベースにしたもので、レジ混雑予測の開発にはベイシアも知見やノウハウを提供している。

三好店ではこれを使い、店舗入口に1台ずつ設置したカメラの映像から入店客数をカウント。さらに、レジにも各1台ずつカメラを設置して客の並び状況を補足している。

こうして入店客数とレジ前の混雑状況をリアルタイムに把握。さらに、入店客がレジに到達するまでの買い周り時間も測定し、平均買い周り時間に基づいて15分後と30分後のレジ混雑を予測している。

なお、映像データの分析は店舗内に設置したIoTゲートウェイ内で行っており、入店客数とレジ前の並びを示す数値データだけをOKIのクラウド「EXaaS」に送信している。映像を店舗の外に出さないことで、来店客のプライバシーを保護しているのだ。混雑予測はクラウド上で行い、司令塔役のスマートフォンにその結果が届く仕組みだ。

月刊テレコミュニケーション2018年8月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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