「iPhone以前は、企業ユーザーは“通信コスト削減”のために携帯電話を導入していたが、iPhone登場後は、スマートフォンという言葉の定着とともに、“業務活用”を目的とした引き合いに変わってきた」――。ソフトバンクモバイル・プロダクト・マーケティング本部法人プロダクトサービス統括部担当課長の中野晴義氏はこう語る。
多くの法人にとって従来のケータイソリューションは、内線連携で通話コストを削減する程度のものでしかなかった。当時から業務活用に使えるソリューションはさまざまなベンダーが投入していたが、そういった商談ができるユーザー企業はごく一部だった。
2008年7月に「iPhone 3G」が日本市場に登場してブームになったが、すぐに法人での採用が進んだわけではない。当時は「ビジネスコンシューマー」いう言葉が使われたように、スマートフォンはビジネスマンが個人で購入して仕事にも活用するのが主流であり、ビジネスソリューションとして企業にどのような提案をするのかが課題だった。
多様化する法人ニーズ
ソフトバンクテレコム・営業推進本部マーケティングプロモーション部部長の中村拓博氏は、「まずはメールやスケジュール連携からと考えた」という。ちょうどiPhone 3Gの最初のOSである「iPhone OS 2.0」でVPNとExchange連携の2つの法人向け機能がサポートされたこともあり、ソフトバンクグループではExchange機能を活用したメール連携ソリューションを中心に訴求を始めた。
実際に利用が進むと、ユーザーからも受発注や在庫管理、eラーニングや出退勤等、さまざまなニーズが浮上してきた。これにともなって、様子見をしていたケータイソリューションベンダーも、iPhone対応のソリューションを続々と開発するようになってきた。
こうした流れのなかで、「iPhone 3GS」が登場した2009年6月頃には、多様化した法人モバイルニーズに対応する提案へとシフトしていったという(図表)。
図表 多様化する法人モバイルニーズ |
最近の状況としては、「ボリューム感が出てきた」と中村部長は語る。スマートフォンの場合、iPhoneに限らず、まずマネジメントの責任者が導入し、全社に拡がるというパターンが多いそうで、現在はそのような企業の全社導入が相次いでいる段階という。