スマートフォンやタブレットは個人だけでなく法人にも浸透しており、すでに多くの企業が何らかの形で業務に活用している。
シード・プランニングによると、法人市場におけるスマートフォン(回線契約のタブレットを含む)の加入数は、2015年度の986万契約から2020年度には1870万契約と2倍近くまで拡大する見通し。翌2021年度には2000万契約を突破すると予測する(図表1)。
図表1 国内法人モバイル端末の加入数の推移
現在、企業のスマートデバイス導入を後押しする大きな要因となっているのが「働き方改革」だ。
生産年齢人口の減少が急速に進む中で労働参加率を上げるためには、高齢者や女性の就業を増やす必要がある。特に女性の場合、出産や育児、介護を機に離職する人が多く、離職率を下げるためには、テレワークなどオフィスに縛られない働き方の実現が重要になる。
企業で働く人を対象にしたテレワークは、①在宅勤務、②サテライトオフィスなどの施設利用型、③モバイルワークの3つに分類される。
いずれもオフィスに依存せず、いつでもどこでも仕事ができる働き方だが、その環境作りの一助となるのがスマートデバイスの活用だ。「働き方改革が追い風となって、部分導入から全社導入への拡大など、企業のスマートデバイス導入はさらに進むだろう」とシード・プランニング リサーチ&コンサルティング部エレクトロニクス・IT第1チーム部長 主席研究員/コンサルタントの杉本昭彦氏は予想する。
スマートデバイスやモバイルソリューションを取り扱っている企業の関係者も「世の中で働き方改革やテレワークが話題になっていることから、スマートデバイスを使って自社の働き方を見直そうと考える企業が急増している」と異口同音に語る。
柔軟な働き方を実現するテレワークだが、総務省の「情報通信白書 平成29年度版」によると、導入している企業の多くが、未導入の企業と比べると直近3年間の売上高や経常利益などの業績で増加傾向にある。また、テレワーク以外のICT(無線通信技術システムやツールの導入、クラウドサービス)を利活用している企業は、そうでない企業よりも労働生産性が1.2~1.3倍高くなっているという。
テレワークの導入やICTの利活用は、離職率の低下といった「守り」の働き方改革だけでなく、労働生産性の向上など「攻め」の働き方改革にも有効であることがわかる。今後、限られた労働力で生産性を向上させなければならない日本企業にとって、スマートデバイス活用の重要性はいっそう増してくる。
だが、スマートデバイスはただ導入すればいいというわけではない。ここからは、導入および運用にあたってのポイントを見ていくことにする。