ライムライト・ネットワークスのCDN戦略「キャッシュヒット率で他社を圧倒」

動画などの大容量コンテンツを高速・安定的に配信するためにCDNは欠かせない。ライムライト・ネットワークスは、キャッシュヒット率の高さで快適な配信を実現するという。

「大容量コンテンツをエンドユーザーに高速かつ安全に届けることは我々のミッションだが、その重要性はかつてないほど高まっている」。こう語るのは、コンテンツ・デリバリ・ネットワーク(DCN)ベンダー、米ライムライト・ネットワークスCEOのボブ・レント氏だ。

スマートデバイスや動画サービスの普及に伴い、ネットワークを流れるトラフィック量は爆発的に増加している。同社では2020年までにコンシューマー向けインターネットトラフィックの82%は動画になり、15年から20年までの間にモバイル端末のデータトラフィックは8倍に増加すると予測する。さらにIoTの本格化により、20年までに263億台ものIoTデバイスがIPネットワークに接続するようになるという。加えて、DDoS攻撃をはじめとするサイバー攻撃が日常化しており、新しい攻撃手法も次々に生まれている。

こうしたなか、オンラインゲームや動画、音楽などを国内外に配信する企業の間では、コンテンツ配信専用ネットワーク「CDN」のニーズが高まっている。世界各地に張りめぐらせたネットワークに分散配置されたキャッシュサーバーでコンテンツをキャッシュし、エンドユーザーに最も近いサーバーから高速配信するCDNは、国内では海外ベンダーのほか、NTTコミュニケーションズやIIJなど大手通信キャリアも参入する激戦市場。ライムライト・ネットワークスは独自の戦略で存在感を示している。

ライムライト・ネットワークス
(左から)ソリューション・エンジニア・ディレクターのカイル・フェイバー氏、グループバイスプレジデントアジアパシフィックのキム・クワンシク氏、CEOのボブ・レント氏、ライムライト・ネットワークス・ジャパンカントリーマネージャーの田所隆幸氏

WAF運用の負担を軽減ライムライト・ネットワークスのCDNサービスの最大の特徴は、主要都市40拠点以上、配信ポイント80カ所以上と世界最大規模のプライベートネットワークを経由してコンテンツを配信していることだ。

これにより、インターネットの不安定さの影響を極力受けずに、安定してコンテンツを運ぶことができる。CDNベンダー最大手の米アカマイ・テクノロジーズをはじめ他社はインターネットをバックボーンに使ってコンテンツを配信していることから、この点が競合他社との大きな差別化となっている。

16年からは、プライベートネットワークに①DDoS攻撃対策の「DDoS Attack Interceptor」、②クラウド型WAFの「Limelight Web Application Firewall(以下Limelight WAF)」の2種類のセキュリティソリューションを組み合わせて提供している。サイバー攻撃が頻発する中で、既存のユーザー企業からのセキュリティ機能を求める声に満を持して対応したものだという。

一般的にWebサイトは静的コンテンツ(画像や文字など)と動的コンテンツ(ユーザー固有情報や時間の経過とともに変化する情報)で構成される。静的コンテンツについては、オリジナルのWebサーバーに代わってCDNのエッジサーバーでキャッシュされる。サイバー攻撃を受けた場合も同様で、Limelight WAFは動的コンテンツのみを処理する。これにより、Webサーバーへの攻撃の影響は最低限に抑えられる。

通常、WAFはWebサーバーの前にユーザー企業が設置するが、CDNベンダーが代わりに提供することで、ユーザー企業はWAFを自前で運用する必要がなくなり、負担が軽減されるという。

サイバー攻撃は悪質・巧妙化する一方であり、CDNベンダーが自社だけで対策を取るのは限界がある。そのため今後は、セキュリティベンダーとの連携による機能拡充を予定している。動画配信パフォーマンスを改善 同社はセキュリティと並び、より高速・安定的なコンテンツ配信のためにキャッシュの効率性や配信パフォーマンスの向上に注力している。

キャッシュの効率性については、サーバーを駆動するソフトウェアの改善により、12カ月間で約700%向上したという。

その効率性から、キャッシュヒット率(CDNサーバーが企業のWebサーバーの代わりにコンテンツを配信する割合)は平均98%と他社平均の80%を大幅に上回る。「キャッシュサーバーにデータがないためにオリジンサーバーにデータを取りに行く回数が少なくて済むので、レスポンスも速い」とグループバイスプレジデント アジアパシフィックのキム・クワンシク氏は説明する。

この5月には、プライベートバックボーンネットワーク上に構築されるCDNプラットフォーム「Limelight Orchestrate Platform」の機能を強化した。独自のCDNコア・ソフトウェアであるEdgePrismのキャッシュ管理と配信を最適化した結果、動画の配信パフォーマンスが大幅に改善。米国では「SDビデオのリバッファリング(動画ファイルの一部を再びバッファメモリに読み込むこと)33%削減」「HDビデオのリバッファリングを25%削減」といった成果が生まれているという。

「自社で保有する特許技術を活かし、今後もコンテンツ配信の改善に取り組んでいきたい」とソリューション・エンジニア・ディレクターのカイル・フェイバー氏は話す。

図表 Limelight Orchestrate Platformの概要
図表 Limelight Orchestrate Platformの概要

月刊テレコミュニケーション2017年7月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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