教育機関に特化したクラウドWi-Fi――大学向け機能と“完全コントローラレス”で差別化に成功

文教市場は無線LANの導入意欲が高く、多くのベンダーが狙う激戦区の1つだ。この市場に特化したクラウドWi-Fi「CAMPUS4」を提供するNHNテコラスは、大学等で求められる付加機能を組み合わせることで差別化している。

完全な“コントローラレス”一方、クラウドWi-Fi自体にも大きな特徴がある。“完全なコントローラレス”であることだ。これが提供コストの低減、拡張性の向上につながっている。

一般的なクラウドWi-Fiは、提供事業者がデータセンターで無線LANコントローラを運用し、WANを介してAPを制御する形態が多い(図表2【2】)。だが、それでは「オンプレミスの場合とコスト構造は変わらない」(白倉氏)。APが増えればコントローラの入れ替えも必要になる。

図表2 コントローラ型とコントローラレス型(クラウド)の比較
図表2 コントローラ型とコントローラレス型(クラウド)の比較

CAMPUS4は、仮想コントローラ機能を内蔵するアルバネットワークス製のAPを使用することでこの問題を解消している。図表3のように複数のAPが自律的に連携・協調して動作するものだ。その上で、APの稼働・利用状況のログを、クラウド上の管理ツール「Aruba AirWave」に収集し可視化する。APの設定変更等もAirWaveから行える(図表2【3】)。

図表3 コントローラ内蔵AP
図表3 コントローラ内蔵AP

こうした構成を取ることで、APが増えてもAirWaveのライセンスを買い足すだけでよく、低コストにサービスが行える。コントローラはクラウド上にも存在しないため、AP増設時の制限もなく、スケーラビリティの高いサービスが提供できる。他社のクラウドWi-Fiの利用料はAP1台あたり月額3000~4000円が相場だが、CAMPUS4は前述のeduroam、SINET連携および故障・障害時のサポートを含め月額2000円だ。

こうしたことが実現できる秘訣は、同社の技術力にあると白倉氏は話す。

コントローラ内蔵APで集中制御できるAP数は通常30台程度に限られるが、NHNテコラスは独自の知見とノウハウによって、合計数百台規模のWi-Fi環境でも安定的に運用することに成功しているという。連携して動作するAPのグループを複数作り、それらをクラウド上のAirWaveから統合的に運用管理している。

NHNテコラスの技術部門は元々、ライブドアのITインフラ構築を担っていた技術部隊を母体としている。ライブドアが公衆Wi-Fi事業に参入した05年から大規模なWi-Fiインフラの構築を手がけてきており、そのノウハウが今“教育機関のためのクラウドWi-Fi”に活かされている。

現在のユーザーは大学が中心だが、白倉氏は今後、タブレット導入が進む小中学校にも提案を進める考えだ。スモールスタートが可能なクラウドWi-Fiのメリットを訴求するのに加え、eラーニング等のアプリベンダーとの協業も検討している。

月刊テレコミュニケーション2017年1月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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