2020年度後半に、ISDN(Integrated Services Digital Network:サービスデジタル総合網)がサービスを終了する。NTTが固定電話のPSTNをIP網に移行するのに伴い、PSTN上で提供されているISDNのデータ通信もその役割を終えるためだ。
コンシューマー市場ではADSLや光回線への移行が進み、すでに“過去の遺産”となっているISDNだが、「カバーエリアの広さ」「帯域保証型」「低コスト」「開通期間の短さ」といった特徴から、法人市場では今も現役として活躍している。ざっと見渡しただけでも、銀行のセンター拠点とATM間のデータ通信のバックアップ、ファームバンキング(銀行と取引先企業間の振込・口座照会)、ED(I企業間電子商取引)、POSレジ/決済端末のデータ送信、監視カメラの映像通信、ラジオ放送など幅広く利用されている。
1988年4月にNTTが提供を開始したISDNサービス「INSネット64」の契約数は、15年度末時点で256万回線。このうち約15万回線がデジタル通信モード(データ通信)と推計される。他社のマイラインなども含めると、現在は約30万回線程度がデータ通信に使われていると見られる。
NTTではIP網への移行方法として、帯域確保型データ通信が利用可能なひかり電話「データコネクト」やIP-VPNなど「オールIP」への移行を主軸に提案している。
そのためにはセンター側装置や拠点側端末をIP対応にする必要があるが、更改に時間がかかり、場合によってはISDNの終了時期に間に合わない可能性が高い。また、アクセス網が光回線になることでISDNよりも通信コストがアップしたり、そもそも地域によってはまだ光回線が敷設されていないという問題もある。
これらの理由からISDNを利用している企業の間では、「光回線によるオールIP移行は容易ではない」と見る向きが多い。
NTT側もこうした状況は把握しており、サービス終了時期の後ろ倒しの検討も開始している。
NTT東日本・経営企画部 中期経営戦略推進室担当部長の新國貴浩氏は「予定通り20年度後半にすべての移行が完了できる状況にはない」と認めた上で、「他事業者とのIP間接続への移行方法や移行スケジュールの検討結果次第だが、終了時期を延伸することも可能」との見方を示す。終了時期は17年度の早い時期に確定し公表される予定だが、当初計画より後ろ倒しになる可能性が高いという(図表1)。
図表1 「円滑な移行に向けたロードマップ」の概要[画像をクリックで拡大] |
こうした中で、既存のシステムや端末に手を加えることなく、IP網への移行を実現するソリューションが各社から登場している。ここからは、無線(LTE/3G)と変換アダプターの2通りの方法について紹介する。