ニフティが9月に製造業とサービス業に携わる20代以上の男女を対象に行った調査では、製造業で78%、サービス業でも65%が「IoTの活用でビジネスが進展する」と回答した。他方、「実際に勤務先企業がIoTを活用、準備、または検討している」という回答は、製造業で48%、サービス業では22%にとどまるという。
IoTビジネスカンファレンスで講演したニフティの佐々木浩一氏は、この調査結果を踏まえて、企業のIoT活用を広げるにはいくつかの課題が残っていると指摘。これらを解決し、IoTによる企業の業務改革のドライバーの役割を担うものとして、ニフティが昨年開設した「IoTデザインセンター」の取り組みを紹介した。
佐々木氏は、IoTデザインセンターを「IoTを活用して企業の事業課題を解決するプロフェッショナル集団。IoTに取り組む企業をビジネス・テクノロジーの両面から支援できる体制を整えている」と説明。「2015年7月の開設以降、100件を超える企業のご相談に乗ってきた」と述べた。
IoTの3つの課題を解決IoTデザインセンターでは、(1)企業のIoT活用をビジネス・技術両面でコンサルティングする「IoTコンサルティング」、(2)IoTシステム・サービスの設計・構築・開発を行う「IoTインテグレーション」、(3)システム構築・サービス提供に必要となるプラットフォームやVPNサービス(L2VPN)などを提供する「IoTテクノロジープラットフォーム」の3つのカテゴリのソリューションを提供。これらを通じてIoTの活用を検討している企業の課題解決を図っているという。
ニフティIoTデザインセンターが提供する3つのソリューションカテゴリ |
では、具体的にはどのような取り組みがなされているのか――。
佐々木氏は、IoTの活用を考えている企業の多くが抱えている課題の1つに「自社の製品・サービスとIoTをどう結びつけるかが明確にならない」、すなわち「IoTで何を行えばいいのかが分からない」ことがあると指摘。この課題を(1)のIoTコンサルティングの「アイディア創出支援サービス」で、解決できると述べた。
アイディア創出支援サービスは、「デザイン思考」に基づいてIoTを導入しようとする企業とニフティがワークショップを行い、テーマ設定、課題解決のためのアイディア出し、仕様策定や対象となる顧客像(ペルソナ)の設定などを進めていくというもの。IoTを活用した新サービス・アプリケーションの開発に、ニフティが顧客企業とともに取り組んでいくというのである。
アイディア創出支援サービスの展開イメージ |
さらに佐々木氏は「収集したデータをどう活用すれば効果を出せるかが分からない」、すなわち「データ活用の難しさ」も、企業がIoT活用する上で大きな課題となっているという。そこでニフティは、(2)のIoTインテグレーションでデータサイエンティストによる分析サービスを提供、この課題の解決を図っているという。
ニフティでは「データの取得・分析(Data)」「分析結果の活用・反映(Action)」「効果・メリットの創出(Output)」という一連のサイクルをデータの「フィードバックループ(Feedback loop)」と名付け、これに基づいてIoTを活用し価値・効果を生み出すための支援を行っている。
佐々木氏は「IoTによってこれまでは取得できなかったデータが取得できるようになる。そのデータをさまざまなアクションに落とし込み、メリットを生み出すことが、IoTの基本的なバリューサイクルだとニフティでは考えている」と、この取り組みの背景を説明する。“データによる価値創出”が、「IoTの本質」だというのである。
データのフィードバックループのコンセプト |
佐々木氏が、3つ目の課題として取り上げたのがコスト。多くの企業から「IoTを活用するための予算が無い」「開発コストが高い」という声が聞かれるという。
ニフティでは、(3)の「IoTテクノロジープラットフォーム」のソリューションを活用することで、この課題を解決できると見る。
例えば、IoTデータの収集・制御/蓄積/活用・処理を担う「ニフティクラウド IoTプラットフォーム」を利用すれば、IoTの構築コストを大幅に引き下げることができる。
大量のIoTデバイスをクラウドに接続・管理する「ニフティクラウド IoTデバイスハブ」を用いることで、デバイスのデータ取得/制御/ユーザーの紐付けなどが、効率的に行えるようになる。
さらに、IoTで取得したデータをグラフなどで可視化する「ニフティクラウド Data Visualizer(β)」や機械学習基盤をクラウドサービスとして提供する「ニフティクラウド Machine Learning(トライアルα版)」も用意されており、こうしたレディーメイドの機能を活用することで、IoTの開発をスピーディかつ低コストで行えるようになるというのだ。