インターネット環境に抱えていた2つの課題このようにBCPを目的にネットワーク環境を次々に整備していった葛飾区だが、さらに今年10月にはインターネット環境も刷新している。
同区がインターネット環境に抱えていた課題は次の2つだ。
まずはパフォーマンスである。約10年前に導入したインターネット環境を使っており、帯域幅は10Mbpsの帯域保証。「正確に言うとインターネットエクスチェンジにも4Mbpsの帯域保証が付いていましたが、かなりストレスを感じる状況でした」と土居氏は話す。
もう1つはコストだ。同区ではルーターやファイアウォールなど、インターネット接続用のネットワーク機器についてはホスティングサービスを利用。また、公式ホームページのWebサーバーはハウジングで運用していたが、「コストが結構かさんでいました」と江川氏は言う。
そこで、公式ホームページのWebサーバーを構築するための仮想化環境も含めた新しいインターネット環境に関する提案を5社に依頼。比較検討のうえ、採用したのは今回もKDDIの提案だった。
葛飾区が新しいインターネット環境として採用したのは、「KDDI Wide Area Virtual Switch 2(WVS 2)」と「KDDI クラウドプラットフォームサービス(KCPS)」である。
WVS 2は、葛飾区がデータセンター間と拠点間で利用しているWVSの後継サービスだ。WVS 2のインターネット接続サービスの特長の1つは、UTMの機能を網側で提供できること。同区は、ファイアウォールやURLフィルタリング、メールウイルスチェックなどのセキュリティ機能を活用している。
「選定にあたっては、セキュリティ面を担保することが必須条件の1つでした。ホスティングサービス時代と同等レベルのセキュリティを確保できています」(江川氏)
情報システム課の業務室 |
従来と比べて大きく改善したのは運用面である。
葛飾区では以前からURLフィルタリングを実施しているが、ブロックしているサイトの閲覧が業務上必要になるケースは当然ある。そうした場合、従来はホスティングサービス事業者に依頼し、そのサイトをホワイトリストに登録してもらう必要があった。ところが、「依頼から設定完了まで、1週間は時間が欲しいと言われており、結構な時間を要していました」と江川氏は振り返る。
それが現在は、KDDIに設定を依頼することもできるし、急ぐのであれば、WVS 2のWebポータル機能「カスタマーコントローラ」から自分で設定することもできる。「以前と比べて、タイムリーに設定変更できるようになりました」(江川氏)。
WVS 2のカスタマコントローラの画面。セキュリティ機能の追加・設定変更などがWeb上でスピーディに行える。WVS 2の大きな特色の1つだ |
インターネットの回線速度については、10Mbpsから1Gbps(ベストエフォート)に高速化した。「業者との大容量データのやりとりなどにクラウドストレージを利用していますが、以前は10MBのデータをアップロードするのに10~15分もかかっていました。それがインターネット環境をWVS 2に移行してからは、一瞬でアップロードが終わるようになりました」と江川氏は喜ぶ。
BCPの観点でもメリットがあった。WVS 2なら、東日本エリアに大規模災害が発生してインターネットが不通になった場合でも、西日本エリア経由でインターネットに接続できるからだ。