人情の町「葛飾区」のネットワーク大改革!――BCP強化とコスト削減で区民サービス向上へ

東日本大震災をきっかけに、動き出した葛飾区のネットワーク改革――。KDDIのWVSなどを活用し、災害時にも強いネットワークを実現するとともに、年間約2000万円のコスト削減効果も得ている。

老朽化した本庁舎に集中していたサーバー群葛飾区の本庁舎が入る葛飾区総合庁舎は、昭和37年竣工の本館および議会棟と、昭和53年竣工の新館から構成されている。「かなりの歳月が経過しており、大規模災害が起きると機能しなくなることも考えられました」と江川氏は話す。

葛飾区では従来、各種システムを本庁舎内のサーバールームで運用していた。このため、本庁舎が被災すると、ほとんどのシステムがダウンする可能性があったのだ。

葛飾区総合庁舎
葛飾区立石にある葛飾区総合庁舎

しかし、「役所が被災したからといって、区のシステムを稼働させないわけにはいきません」(土居氏)。東日本大震災の教訓から、BCP(事業継続計画)の重要性をあらためて痛感していた葛飾区。そこで検討を重ねたうえ決定したのが、より堅牢な民間データセンターへのシステム移転だった。

葛飾区は現在、ある民間のデータセンター内に専有スペースを確保。区所有のサーバーによって仮想化環境を構築し、それまで本庁舎内にあったシステムの移行を進めている。システムの移行作業は平成25年度からスタートしており、来年度の平成28年度には本庁舎内のサーバールームにあるシステムの移行が完了する計画だ。

民間データセンターへの移行には、データセンターと本庁舎間を結ぶネットワークも新たに必要だったが、その選定にあたっては大手キャリア3社のサービスを比較検討。「L2レベルの閉域網という本区の要件を満たし、最も財政的な効果も得られるサービスとして、KDDIのWide Area Virtual Switch(WVS)を導入しました」(江川氏)。

拠点間網も更改し、データセンターへダイレクト接続より災害に強い民間データセンターへシステムを移行することで、BCPを強化した葛飾区。しかし、これだけではまだ本庁舎がボトルネックであることに変わりはない。

葛飾区内には200弱の拠点があるが、データセンターには本庁舎を経由して接続するネットワーク構成になっていたからだ。本庁舎のネットワークに障害が発生すれば、全拠点でシステムが使えなくなる。

災害時でもシステムを使い続けるためには、拠点間網の見直しも必要だったが、民間データセンターへの移行を進めるなか、ある知らせが届く。今まで拠点間網として利用していた広域イーサネットのサービス終了の知らせだった。

これを契機に、拠点間網の更改に具体的に着手し始めた葛飾区。新しい拠点間網の必須要件としたのはL2の閉域網であること、そして各拠点からデータセンターに直接アクセスできる構成をとれることだった。

比較検討したのは、従来キャリアの後継サービスとWVSの2つ。データセンター間ネットワークとの親和性など、総合的に判断してWVSを選択した。各拠点におけるWVSへの切替作業は、平成26年度の夏からスタートし、翌年3月末に完了している。

この結果、各拠点からWVSを介してデータセンターに直接接続することが可能になり、ネットワーク面でもBCP強化を実現した葛飾区。さらには、大きなコスト削減効果も得た。「拠点間網にかかるコストを年間約1100万円削減できました」(江川氏)。

コスト削減できた理由の1つには、回線を集約できたことが挙げられる。

葛飾区のネットワークは4系統に分かれている。区職員の業務を担う「内部情報系」、住基ネットなど区民のデータを取り扱う「住民情報系」、そして「学校系」と「図書館系」だ。

政策経営部 情報システム課が管理しているのは、内部情報系と住民情報系の2つである。以前は、内部情報系と住民情報系の両方の利用が必要な拠点には、それぞれ別々の回線を引いていた。1拠点につき2本の物理回線を引いていたのだ。

しかし、「今の技術であれば、論理的に完全に分割できることが分かり、回線数を一気に整理することができました」と土居氏は語る。

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