オープンか市販品調達かもう1つの軸は、オープン性をどこまで重視するかだ。
そもそもSDNの進展には、製品・技術のオープン化が欠かせない。SDNコントローラと、データプレーンを構成するスイッチ・ルーター機器との間のインターフェース(サウスバウンドAPI)がベンダー毎に異なっていては、新たな機能やアプリケーションの開発・利用は進み難い。SDNコントローラをアプリケーション側から制御するためのノースバウンドAPIについても同様だ。
そこで、SDNベンダー各社は、オープンソースソフトウェアのSDNツール群を開発する「OpenDaylight」や、クラウド基盤ソフト「OpenStack」のプロジェクトに参画している。OpenDaylightは、SDN用APIを共通化することを狙いとしており、またOpenStackとも連携して、仮想化されたネットワークリソースをOpenStackから共通APIによって利用できるようにする。
さらに、ジュニパーネットワークスのように、自社のSDNコントローラ「Contrail」のオープンソース版「OpenContrail」を公開し、より多くの開発者に供するといった例もある。
こうしたオープンソースに対するユーザーの関心は高い。ただし、使いこなすには高度な開発・運用のスキルが必要で、IT/ネットワークインフラの運用や提供を本業とする通信事業者やデータセンター/クラウド事業者の一部に限られているのが現状だ。
一般的な企業ではベンダーが性能・機能を検証した“市販品”を使うのが主流である。
もちろん、市販品イコール“クローズド”なわけではない。ベンダー各社は標準的なAPIへの対応や、自社製品のインターフェース・機能の公開を進めており、マルチベンダーなSDN環境を実現するためのエコシステム構築を進めている。
こうしたトレンドについて、ジュニパーネットワークスのサービスプロバイダービジネス統括本部 営業開発本部でチーフアーキテクトを務める長滝信彦氏は、ユーザーの動向を3 つに分
けて整理する。
1つが、オープンソースを積極活用して他社と差別化するための機能開発に取り組む「DIY型」。グーグルやアマゾン、フェイスブックといったメガクラウドベンダーが代表例だ。
2つ目は、前述の市販品を使い、ネットワークアプリの開発も基本的にベンダーやSIerにアウトソースする「Commercial Source型」。冒頭の(1)(2)のようなメリットを短期的に享受したい企業やデータセンター等がこれに当たる。
そして3つ目が、両者の中間に当たる「ハイブリッド型」である。「最近、我々のSDN製品のお客様で増えてきている。特に通信事業者がこれに当てはまる」と長滝氏は話す。「市販の製品を組み合わせることに慣れており、かつ、自社の強み、差別化要因を作るためにオープンソースも積極的に使うようになってきている」という。
ジュニパーは、先述の「OpenContrail」とともに商用版「NetworksContrail」も展開し、いずれのトレンドにも対応できるようにしている。シスコもオープンなAPIをサポートする独自のSDN製品開発と平行して、OpenDaylight、OpenStackを活用した商用製品の開発を進めている。
以上述べてきたように、SDNのユースケースがある程度整理され、また製品選びの幅も広がってきた。次回は、企業/データセンター向け市場におけるSDNのトレンドを見ていく。