人口減少社会に突入した日本——。その影響は今後、各方面に深く及んでいくことが必至だが、鉄道事業ももちろん例外ではない。
「人口減少の時代を迎えるにあたって、メンテナンスをどうするか。非常に難しい時代に入ってきた」と東日本旅客鉄道(JR東日本) 執行役員 総合企画本部 技術企画部長 JR東日本研究開発センター所長の横山淳氏は話す。
人口構造の変化とJR東日本のメンテナンス費用の推移 |
線路、列車、トンネル、橋梁など、鉄道事業は膨大な設備で成り立っている。JR東日本の場合、こうした設備の保守にかかっているコストは実に年間約4400億円。同社では長年、営業経費全体の1/3~1/4をメンテナンス費用が占めてきたが、人口が減っていけば当然、長期的には運輸収入も減っていく。これまで、ほぼ横ばいで推移してきたメンテナンス費用は、削減していかなければならない。
人口減少に合わせて保有設備の量も減るのであれば、この問題は簡単だ。しかし、「当社の性格上、『人口が減るから○○線はなくします』というのは難しい」と横山氏。すなわち、人口が減少しても、保有設備の量は「横ばいか、若干減る程度」だ。
日本の鉄道の歴史は100年以上。老朽化したトンネルなどのメンテナンスも大きな問題だという |
また、「人口が減ったから故障が増えた」とも当然いかない。安全・安定輸送の一層のレベルアップは、JR東日本にとって最優先テーマ。「保守レベルは今後さらに上げていく必要がある」
人口が減少していくなか、いかにメンテナンス費用を削減しながら、保守レベルを向上させるか——。この相反する2つの目標を実現するため、JR東日本が現在推進しているのが「スマートメンテナンス構想」。そして、その中核を担っているのがIoTである。
JR東日本の「スマートメンテナンス構想」の全体像 |