――ファーウェイではIoT市場をどのように捉えているのですか。
周 当社は「ベター・コネクティッド・ワールド」というキャッチフレーズの下、いかにして世界をつなげていくかにフォーカスして事業を進めています。人同士だけでなく人とモノ、モノとモノをすべてつなげていこうということです。IoTは、まさにファーウェイのビジョン、方向性を示している分野といえるでしょう。
実際に技術の進歩で非常に多くのモノがつながろうとしています。世界の携帯電話事業者が参加するGSMAの統計によると、世界ですでに2億弱のモノがネットワークにつながっているそうです。当社は10年後にはこれが1000億になると見ています。これが非常に大きな価値を生み出していくことになるはずです。
――IoTにはどのような形で取り組んでいるのですか。
周 標準化、研究、製品開発の3つの側面からこの分野への取り組みを進めています。
御存知のように標準化は市場を創り出す上で重要な役割を担っています。そこで当社は3GPPやETSI(欧州電気通信標準化機構)、そしてIoTを専門とするoneM2Mなどでの活動を通じて、多くの技術の標準化に貢献していきたと考えているのです。標準化のベースとなるR&Dにも力を入れており、プラットフォーム、接続技術、端末系のハードウェア、センサーなど様々な分野で研究を行っています。
そして、すでに提供を開始しているIoTゲートウェイをはじめ、将来に向け多くのIoT分野の製品・技術の開発に取り組んでいます。
地中で10年間データを送り続けるガスメーターも――IoTの領域は非常に広いと思います。どの分野で製品を展開していくのですか。
周 当社はIoTのアーキテクチャを大きく3つのレイヤに分けて考えています。
その一番下が端末やセンサーなどのデバイスです。ここでは、当社が独自に開発したIoTデバイス用のオペレーションシステム「LiteOS」の展開に力を入れています。
LiteOSは10KB程度のストレージがあれば運用できる非常に軽量なOSで、省電力性にも優れています。当社はこれをオープンソースにすることで、広く使っていただけるようにしていきたいと考えています。
もう1つ我々が重要だと考えているのが、その上の「接続」のレイヤです。我々は2つの技術でここに対応していこうとしています。
1つがNarrowband Cellular IoTという新しい携帯電話の無線規格で、これを導入することで基地局に格段に多くのデバイスを接続させられるようになります。狭い周波数帯にエネルギーを集中させることでカバレッジを拡大していて、建物の奥や、場合によっては地中のデバイスにも接続ができます。
――LTE-Mの名称で議論されてきたものですね。
周 そうです。Narrowband Cellular IoTは、当社がLTE-Mで推進している技術で、標準化が早いペースで進んでいます。当社はこの技術をサポートするために、昨年イギリスのNEULというチップセットベンダーを買収しました。おそらく今年の末には商用化が可能になると見ています。この技術と先程のLiteOSを組み合わせることで、地面に埋めたまま10年間電池でデータを送り続ける水道/ガスメーターのようなものが実現できるのではないかと期待しているのです。
この「接続」における当社の2つめの注力分野は、ネットワークの裏で働くプラットフォームです。その1つ、IoTプラットフォームはネットワークに接続される膨大な数のIoTデバイスを効率よく管理できるようにするもので、モバイルだけでなく固定系ネットワークによる接続にも対応しています。これに加えてプラットフォームの分野では、システム全体を管理するオーケストレータやビッグデータなどの分野にも力を入れています。
一番上のレイヤはアプリケーションになりますが、当社はここにはタッチしません。しっかりしたプラットフォームを提供することでアプリケーションに力を入れている方々を支えていくというのが、当社の戦略です。デバイスでもセンサーなどは、自ら手掛けるつもりはありません。