5Gは低周波数帯にフォーカス
――5Gにはどのように取り組んでいるのですか。
周 5Gは移動通信の将来の大きな方向性であることは間違いありませんが、これがどういうものになるかはまだ明確になっていません。まずこの5Gの定義をしっかり固めて、業界全体として前進していけるようにする必要があると我々は考えています。
そこで、ファーウェイは技術開発を進めるだけでなく、日本の5GMFや欧州の5GPPPなどの推進組織への参画や、世界各国のキャリア、ベンダー、研究機関などとのコラボレーションによって5Gの標準化に向けた取り組みを推進しています。2013年にはカナダ、昨年は欧州で5Gに関する国際会議も開催しました。今年はアジアでの開催を予定しています。
――3月に開催されたMobile World Congress 2015で開発中の5G向けの複数のエアインターフェース技術を発表しました。これらはどういうものなのでしょう。
周 ファーウェイでは5Gに向けてミリ波や準ミリ波と非常に高い周波数の利用技術の開発にも取り組んでいますが、それ以上に我々が力を入れているのが6GHz以下の低い周波数を効率的に使う無線通信技術の開発なのです。
今回当社が発表したSCMA(Sparse Code Multiple Access)ベースの非直交アクセスやF-OFDM(Filtered-Orthogonal Frequency Division Multiplexing)などの技術は、この低い周波数帯(5Gローバンド)での利用を想定したもので、これらにより周波数利用効率を大幅に向上させたり、IoTの膨大な数のデバイスをネットワークに接続することが可能になります。6GHz帯以下の周波数帯は2020年より前に利用できるようになるので、これらの技術は5Gの中でも早期に商用化されるはずです。(図表2)
図表2 ファーウェイが開発中の5G向けの新エアインターフェース技術 |
――日本での取り組みですが、3月にはNTTドコモと5Gのフィールドトライアルを実施することが発表されました。
周 実験では2つの取り組みを行います。1つは今述べた新しいエアインターフェース、もう1つはマッシブMIMOのトライアルです。これらはともに6GHz帯以下の周波数にフォーカスしたものです。
――ドコモは2020年に5Gの商用化を計画しています。このインフラ整備に参画することを狙っているのですか。
周 今回の実験は、あくまでも技術開発や標準化に向けたコラボレーションです。今後私どもの5G技術・ソリューションが多くの通信事業者のビジネスに貢献できるように、技術開発や標準化活動にも力を注いでいきたいと考えています。
ファーウェイは、日本におけるモバイルインフラの売上では、まだライバルに水を空けられていますが、技術面では既に同レベルに来ていると自負しています。2020年には、状況は大きく変わるのではないでしょうか。
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