全社員にiPhoneを貸与して業務効率を向上
経営層の了承を得た情報システム部が最初に取り組んだのは、KDDI 仮想PBXサービスに紐付く内線端末ともなるiPhoneを、全グループ社員に貸与することだった。各部門に1台ずつ固定電話機を残し、それ以外はすべてiPhoneに置き換えた。
iPhone導入に先立っては、Web会議システムやテレビ会議システムを活用し、各拠点のキーマンとなる社員向けのセミナーを開いた。
「iPhoneの操作方法だけではなく、利用するうえでのモラル教育も行いました。スマートフォンを使って撮影した不適切な写真をSNSにアップして問題になるといった不祥事が、様々な企業で発生していたからです」。管理本部 情報システム部 グループリーダーの吉川充洋氏はこう話す。同社は今年3月から段階的にiPhoneの貸与を開始し、10月1日にはグループ全体で1500台のiPhone導入を完了させた。
iPhoneの有効活用を促進するために、イントラネット上にはクラウド型PBX用に開発したiPhoneアプリの使い方を紹介するページなども用意 |
もちろんiPhoneは内線電話端末として活躍するだけではない。iPhoneを使って外出先から社内ネットワークにアクセスできるため、どこにいてもメールをチェックしたり、スケジュールを確認することなどが可能になり、業務効率の向上につながっているという。
KDDI 仮想PBXサービスの展開も順調に進んでいる。既設のPBXとの併用期間を経て、ピーエス三菱では現在、KDDI 仮想PBXサービスだけの運用に切り替わった。グループ全体のPBXのクラウド化も年内には完了する予定だ。これによりピーエス三菱グループの電話システムは、全面刷新されることになる。
6年間で600万円以上のコスト削減効果
新システムの導入によって得られた効果は3つある。
1つは機器の調達・管理コストの削減。クラウド型のPBXを利用し、固定電話機などもKDDIからのレンタルとすることで、固定資産の保有と維持管理にかかる費用が不要となった。
2つめは運用・保守関連コストの削減。電話番号管理や人事異動時の移設工事、拠点ごとの保守を一元管理することで費用を削減できる。
この2つのコスト削減効果は、6年間で600万円になると試算しているという。
「しかも、この試算額には、管理部門の業務軽減などの効果は含んでいません。ですから実際には、もっと多くのコスト削減を達成できるはずです」(佐藤氏)
3つめの導入効果は、災害時などのBCP対策の強化だ。主要なICT機器をKDDIのデータセンターに預けることで、より強固な電話システムを実現できた。
ちなみに、ピーエス三菱では、各事業所で1年に1回は計画停電を行っている。従来、その時間帯は電話を使うことができず、業務に支障が出ることもあったが、KDDI 仮想PBXサービスを導入した現在は、24時間365日いつでも電話をかけられるようになり、安心して業務を進められるようになったという。
iPhoneの電話機能を向上させるアプリなどを自社開発
ピーエス三菱では、自社独自のiPhoneアプリも開発している。例えば、着信転送や050 IP番号発信などの機能を備えたアプリを作り、iPhoneの内線電話端末としての機能を高めている。
ピーエス三菱がiPhone用に開発した電話関連アプリ | その1つである「アドレス帳検索」アプリの画面 |
工事業務においては、作業現場で数百枚の写真撮影を行い、これらを時系列に整理。図面などと一緒に「竣工図書」としてまとめる必要があるが、そのためのアプリも開発した。従来はデジタルカメラで撮影した画像をオフィスに戻ってからPCにコピーし、写真台帳に貼り付けるという作業を行っていた。しかし現在は、iPhoneと自社開発したアプリを使うことで、こうした作業を自動化できるようになった。
災害時の安否確認用のアプリもある。「BCP対策の一環として、アプリを使って災害時の安否確認を行えるようにしています。全社的には震度6弱を基準にアプリが発動するようにしていますが、東北地区だけは震度4に基準を下げるなど、柔軟な対応が取れるようにしています」と管理本部 情報システム部 主任の丹羽謙太郎氏は説明する。今後は、GPS機能を使って災害時に避難経路を誘導するようなアプリの開発も検討していくという。
KDDI 仮想PBXサービスの導入と全グループ社員へのiPhoneの配布によって、いくつもの課題を解決したピーエス三菱――。コスト削減の目途もついた今後、さらなる自社アプリの開発など、クラウド型PBXやiPhoneを有効活用していくための取り組みは一段と加速していくことだろう。