ソフトバンクグループが2012年から毎年開催している企業向けのプライベートイベント「SoftBank World」が今年も本日15日から16日まで2日間にわたり開催されている。その目玉の1つは孫正義社長による基調講演。今回は「情報革命の舞台は、世界へ」と題して行われ、もちろん大盛況だった。
講演にはソフトバンクが来年2月に発売する世界初の感情認識パーソナルロボット「Pepper」も“ゲスト出演”。Pepperの本体価格は19万8000円で、孫氏は「個人でもロボットが買える、パーソナルロボットの時代がやってきた」と話した |
孫氏の講演のメインテーマとなったのは、「日本復活」である。日本のGDPは今や中国に抜かれて世界第3位。少子高齢化が今後さらに進み、労働人口も減少していく日本の将来について悲観的な思いでいる人は少なくないだろうが、孫氏はこうした日本の現状を概観したうえで、「日本はこのまま沈んでいくのか。私は、日本は必ず復活すると考えている」と語った。
そして、そのための方程式として掲げたのが次のスライドである。問題は、「競争力」を構成する「生産性」と「労働人口」を一体どうやって増やしていくかだが、生産性については「そのカギは情報武装にある」とした。
孫氏が示した“日本復活の方程式” |
織田信長に学ぶ「情報ビッグバン時代の生産性向上」
人類の歴史を振り返れば、我々の生活を大きく革新してきたのはテクノロジーである。そして、現在起きているのは「情報革命」。孫氏の言葉を使えば、「情報ビッグバン」であるが、次の要素が今後、「情報ビッグバンを加速度的に進化させる」という。
まずは、コンピュータ(CPU)の進化。コンピュータは電流が流れる/流れない、人間の脳はシナプスがつながる/つながらない――つまり、両者とも2進法で処理を行っているが、2018年にはCPUに搭載されるトランジスタ数は300億を超え、人間の脳の細胞数を超える。次はメモリの進化。現在のタブレットのメモリ容量は128GBまで拡大している。最後は通信速度の進化。ソフトバンクは今年、東京・銀座で行ったモバイル通信の実証実験で1Gbpsを達成した。
「ムーアの法則で過去30年、テクノロジーは大きく進化してきたが、次の30年間もこのようなスピードで進化していくと私は信じている。今まではケチケチしながらだったが、これからは無限大の計算能力、メモリ、通信速度を使えるようになる」
今後30年でさらに進化するCPU、メモリ、通信速度 |
この結果、「人々のワークスタイルはますます、決定的に変わってくる」が、「情報ビッグバンの時代における生産性アップの基礎的なカギ」として、孫氏が挙げたのがスマートフォン、タブレット、クラウドの3つである。ソフトバンクではこれら「三種の神器」をいち早く全社員に導入。これにより、1社員当たりの契約件数は2.3倍、1社員当たりの獲得回線数は2.7倍と、「1人当たりの生産性が倍以上になった」と孫氏は説明した。
ソフトバンクにおける情報武装による生産性向上 |
ただその一方で、日本企業全体で見ると、スマートフォンやタブレット、クラウドの導入は遅れているのが実態だ。孫氏はいまだ日本企業の7割がこれらを未導入という調査結果を紹介するとともに、「日本の歴史を見てほしい。なぜ織田信長は天下を獲れたのか。それは、他国よりも早く鉄砲を活用したからだ。ぜひ日本の企業すべてが活用すべき」と語った。
日本企業のスマートフォン、タブレット、クラウドの導入率 |
また、孫氏が強調したのは、「買ってきて使えば、それだけで競争力が上がる」という点。「織田信長もそうだが、自分で発明する必要はない。自分がスティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグにならなくても、すでに発明されている世界最先端の技術をいち早く取り入れることで、競争力は上げられる」とした。