――関西における春商戦の状況はいかがですか。
永田 昨年と比べると、非常に頑張ったと思っています。関西は、アナログ時代に関西セルラーのシェアが高かったうえ、現在はケイ・オプティコムのFTTHサービスが強く、KDDIの「au スマートバリュー」が強力な環境です。
また、「関西の人はコストにシビア」と言われますが、お金について非常に敏感な側面があることは否定できません。全国的に見ても厳しい市場ですが、そうした状況下でも今年の春商戦は健闘したといえるでしょう。
――昨年6月に関西支社長に就任以来、「関西からドコモは変わる、ドコモを変える。」というスローガンの下、独自の施策を積極的に展開されています。春商戦では何を前面に打ち出したのですか。
永田 ネットワークの強化とお客様対応力の強化で、いずれも非常に地道な取り組みです。
ネットワークについては昨年6月の着任以来、「プロモーションできるエリアを作ろう」と言っています。そこで、昨年末までにJR大阪環状線の全駅が150Mbpsのエリアに対応しました。数カ月という非常に短期間で設備を増強しなければならず現場には無理を強いたのですが、おかげさまで冬商戦に間に合わせることができました。現場には非常に感謝しています。
この3月には駅間も150Mbpsへの対応を完了し、乗車中もインターネットの高速通信が可能になりました。あわせて、冬商戦は「大阪では約2倍速い」、春商戦は「お花見スポットでも快適に使える」と「ドコモといえば通信が速い」というイメージをポスター等でアピールしました。
――これまでもネットワークの整備には力を注いできましたが、それがお客様に伝わるようなプロモーションを心がけているということですね。
永田 その通りです。もう1つの取り組みとして、ドコモはユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)のマーケティングパートナーを務めていることもあり、USJ内も150Mbpsに対応しています。パーク内では、公式アプリを使ったリアルタイム情報などもスムーズにチェックすることが可能です。
関西はUSJだけでなく京都や奈良など観光資源が豊富で人が集まるところも多く、しかもネットワークはエリアの特性が現れるだけに、今後も地域に根づいたプロモーションを展開したいと考えています。
継続重視に方針を転換
――顧客対応力の強化に向けて、具体的にはどのような取り組みをしているのですか。
永田 関西のドコモショップ店頭では、「ストーリー提案」を推進しています。これは関西支社の若手社員が考案したのですが、お客様が興味を持っていることから生活スタイルを想像し、例えば映画が好きなら「dビデオ」、写真に関心があれば「フォトコレクション」をお勧めするというものです。
関西でも以前はお客様に対しアプリやサービスをたくさん付けることをスタッフに求めていましたが、お客様の評判は悪くなる、スタッフのES(従業員満足度)も低下する、我々にとっても経費がかかる割に継続するお客様が少なく自転車操業的に資金を注入しているだけ、というように「Win-Win-Win」とは正反対の状況に陥っていました。このため、まずはきちんと提案し、その結果として獲得件数が付いてくるというように提案方法を重視する方針にあらためました。
スマートフォンは単純な「モノ売り」ではなく、ソリューションやサービスと組み合わせた提案が不可欠です。しかも我々は中期ビジョンで「スマートライフのパートナーへ」を掲げており、新しいサービスが次々に登場してくることから、ストーリー提案は重要な意味を持つようになるはずです。