シンクライアントとネイティブアプリをハードキーでスムーズ切り替え
第二の目的である「作業手順の標準化」も達成した。
ガスメーターの取替時、作業マニュアルでは作業後に1件ずつ伝票を起票することとしていたが、作業をまとめて行った後に伝票起票もまとめて行う可能性もあり、作業結果と起票結果が入れ替わる可能性がゼロではなかった。また、誤取替防止や検針の証拠記録のため、デジタルカメラを使用して新旧メーターを写真撮影。担当者は事務所に帰った後、撮影したSDカードの写真データを個別にサーバーのフォルダーへ保存し、チェック担当者が該当データを探してチェックするという作業を行っていた。
しかし、新システムでは、入力手順に従って一物件ごとに完結させる仕組みとなっており、作業内容と登録情報の不整合は皆無となった。また、スマートフォンのカメラで撮影した新旧ガスメーターの写真データは、通信回線を経由して本社サーバーへ送信され、シンクライアントの登録データと自動的にマッチングされる仕組みとなっており、作業手順の標準化が図られた。
なお、ここまでシンクライアントと説明してきたが、正確にはそうではない。印刷とメーターの撮影作業についてはAndroidアプリを利用している。つまり、正確には、シンクライアントとネイティブアプリのハイブリッドシステムだ。
辻山氏によると、今回のシステム開発で苦労した点の1つが、このシンクライアントとネイティブアプリの連携だという。スマートフォンに実装されているハードウェアキーの1つ「戻るキー」を押すだけで、シンクライアントとネイティブアプリをスムーズに切り替えられるようにした。「作業者は、単に画面を切り替えるようなイメージで、アプリケーションを切り替えられます」
第三の目的である「取り除きメーターの管理強化」については、QRコードが活躍している。取替作業とは別の担当者が、メーターに貼付されたQRコードをバーコードリーダーで読み取ることで、登録データと現物がマッチしているかを簡単にチェックできるようになった。また、いつ誰がチェックをしたかも管理可能になり、確実な返却管理ができるようになったという。
このように、ガスメーター取替業務でも期待通りの成果を獲得した広島ガス――。次に見据えるのは、営業担当者などへのスマートデバイスの展開だ。
「ガス会社の現場業務は特殊なので、どうしてもシステムを自社開発する必要があります。そのため自社で開発し易いAndroidを選択してきましたが、営業向けの場合、汎用的なアプリやサービスを活用できるので、iOSという選択肢もあるでしょう」と辻山氏。モバイル化の効果を熟知する同社が、今度はスマートデバイスを営業活動にどう活用していくのか、今から楽しみである。