2013年末、大塚商会がシスコシステムズと協業して中堅中小企業(SMB)向けのユニファイドコミュニケーション(UC)ソリューション「UCスタータープラン」の提供を始めた。
マーケティング本部 UCプロモーション部 ユニファイドコミュニケーション プロモーション課・課長の市川和幸氏は「将来的には、社員数十人程度のお客様にも適したUCを作りたい」と話す。
UCを導入する動きは大手企業中心に進んでいるが、SMBを主戦場に豊富なICT提案・導入実績を持つ大塚商会が本格的に取り組む姿勢を打ち出したインパクトは大きい。同部 総合NWプロモーション課・課長代理の細井宏明氏によれば、「時間がかかるものと想像していたが、既存のお客様から、思っていた以上に案件が出てきています」という。
(左から)マーケティング本部UCプロモーション部・ユニファイドコミュニケーションプロモーション課課長の市川和幸氏、同部・総合NWプロモーション課課長代理の細井宏明氏、同部・スマートデバイスソリューション課次長の丸山義夫氏 |
「シスコでSMB」の理由
ただ、SMBにUCを浸透させるのは「とても難しいトライ」と市川氏らは気を引き締める。高額投資が行えない、専任のICT担当者もいない企業にも受け入れられる“中堅中小のUC”とは何か――。UCスタータープランの内容を見ると、大塚商会の狙いがうかがえる。
このプランで提供するのは3種のアプリケーションだ。Web会議の「Cisco WebEx」と、IM等が使える「Cisco Jabber」、そして、PCやスマートデバイスから電話帳検索やプレゼンス確認等が行える「Web電話帳」である。
ポイントは2点。1つは、シスコ商材のみで固めたこと。もう1つが、PBX/ビジネスホンとの連携やハードウェアの導入といった“重たい要素”は極力除いている点だ。WebExはSaaS型で提供され、JabberとWeb電話帳を利用するための専用サーバーを1台導入するだけで良い。
マルチベンダーでUCを構築しようとすれば、製品/サービス間の接続検証や運用サポート、トラブル対応に大きな手間がかかる。顧客にも、提供側のSIerにとっても「これがUCの一番の課題」(市川氏)だ。
そこで、単一メーカーの商材で組み上げ、さらに「ビデオ、音声、プレゼンス、ネットワークまで一気通貫でサポートできるメーカー」という点を重視した結果、シスコを選んだ。先に挙げた3アプリの組み合わせも、できるだけ手離れよく、安価に提供できるよう、多彩なシスコ製品の中から厳選したものだという。
電話連携を除いたのも同じ観点から。初期投資の増大、商談期間の長期化を避け、既設PBXの更新のタイミングに左右されることもない。スタータープランの専用サーバーには、IP-PBXをはじめ各種機能を後で追加できる。導入した後に、電話やテレビ会議なども融合した「フルプラン」へのステップアップを顧客企業と一緒に検討していくのが狙いだ。
UCビジネスの種を蒔くためのスタータープランの価格は、ユーザー数や環境によって異なるが「100ユーザーで約300万円」という水準。ただし、3アプリのうち一部、例えばJabberだけから始めたいといった要望にも応える考えだ。図表のように、典型的なUCの入口として「スタータープラン」と、目指すべき将来像として「フルプラン」を提示しながら、顧客企業ごとに柔軟な提案を行っていく。
図表 Cisco UCのプラン概要 |