監視カメラ市場はここ数年、アナログからデジタル(ネットワークカメラ、IPカメラ)への移行が進んでいる。調査会社の富士経済によると、ネットワークカメラは2013年に金額ベースで、2015年には数量ベースでもアナログカメラを逆転すると見られる(図表1)。
図表1 監視カメラ市場規模の推移 |
ネットワークカメラの成長を後押ししている最大の要因が、価格の低廉化だ。
ソニーやパナソニックシステムネットワークスなど主要メーカーが値下げに踏み切ったことで他社も追随、アナログカメラとの価格差が全体として縮小して価格面でのアナログカメラの優位性が薄れ、より高機能なネットワークカメラが選ばれるようになっている。
高機能でありながら安価になったことで、ネットワークカメラの普及が加速している(写真はMOBOTIXの全方位IPカメラ「Hemispheric Camera Q24」) |
価格の低廉化に加えて、「高精細映像」と「大規模運用」に対するニーズが高まっていることもデジタルへの移行を促している要因だ。
治安の悪化を受けて、日本でも繁華街を中心に監視カメラが設置されるようになっており、事件や事故が発生した際にはその映像が証拠として提出される機会も増えている。ところが、アナログカメラの解像度は高くてもVGA(640×480ピクセル)程度であり、人や物の輪郭がぼやけて判別が難しいことから、警察ではVGA以上の映像を証拠能力として推奨しているといわれる。
人の顔を正確に認識するためには最低でも60ピクセル幅は必要とされるが、その基準を満たすのはHD(1280×720ピクセル)以上の高画質映像が撮影可能なネットワークカメラになる。実際、ネットワークカメラで撮影した映像は、人の顔のみならず衣服の色や柄、さらには車のナンバープレートの数字などの細部まではっきりと映し出すことができる。
監視カメラはかつて「あるだけで抑止効果が期待できる」「映像が映ればいい」といわれたこともあったが、今や、それだけでは十分ではなくなっているというわけだ。
一方、大規模運用の現状について、Bosch Security Systemsのネットワークカメラを販売する店舗プランニング・IPソリューション事業部副部長の吉原健太氏は「数百台規模は当たり前になっており、場合によっては数千台規模の案件もあります」と話す。
最近、大型商業施設や高層オフィスビルの建設が各地で相次いでおり、監視カメラの導入規模は拡大する方向にある。海外では5000台~数万台の案件も珍しくなく、「日本でもいずれそうなるのではないでしょうか」(吉原氏)と見る。
こうした状況から、監視カメラを扱う販売代理店の中には「最近の案件のほぼ100%がネットワークカメラ」というところも多く、中長期的には、ネットワークカメラの市場がさらに拡大することが確実視される。