スマートデバイスを業務で利用するための必要条件として、最初に挙がるのがセキュリティの確保。それを実現するソリューションの1つがMDM(モバイル端末管理)だ。
多くのプレイヤーがMDMを提供しているが、国内で高いシェアを有しているのが携帯電話キャリアである。スマートデバイスを企業で利用するうえで基本となるソリューションだけに、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3社それぞれが力を入れているが、そんななかNTTドコモは2013年7月1日にMDMサービス「ビジネスmoperaあんしんマネージャー」の機能を強化した。
機能強化のポイントは、Android搭載スマートフォンの制御が、アプリケーションレベルではなくOSレベルで行えるようになったこと。このため、カメラ機能の利用制限や不要アプリの遠隔アンインストールなど、従来は実現が困難だった高度なセキュリティ設定が可能になった。そして、この機能強化を陰で支えているのが米BoxTone社だ。
同社CMO兼CPOのブライアン C. リード氏は「13年前に設立され、エンタープライズ・モビリティ・マネジメント分野では7年の実績を持つ同分野のベテラン企業だ」と自社を紹介する。
BoxTone CMO(最高マーケティング責任者)兼CPO(最高製品責任者)のブライアン C. リード氏 |
日本ではまだあまり聞きなじみのない企業かもしれないが、それもそのはず。日本法人であるBoxTone Japanは今春に設立されたばかりである。だが、グローバルでの実績は豊富だ。
米国の有力経済誌『Fortune』が選ぶ総収入の高い上位100社のうち42社がBoxToneの顧客。また、規制産業など、ミッションクリティカルな業種への導入実績が多い点も特徴で、例えば米国トップ5の銀行のうち4社がBoxToneの顧客だという。
BoxToneの主な顧客企業 |
AndroidにMDM機能を組み込んだセキュアOS
BoxToneの最大の独自性は、Android OSの中にセキュリティ管理機能を組み込んでいる点にある。
一般的なMDMの場合、スマートデバイスを購入した後、MDMのアプリケーション(エージェント)をデバイスにインストールする。
一方、BoxToneは、「Androidのデバイスメーカーと協力し、あらかじめOSにMDM機能を組み込んで提供している」(リード氏)。このためアプリケーションレベルでは困難な、OSレベルの“深い”セキュリティ管理機能を提供できるのである。また、エージェントのインストールも不要だ。
OSレベルだからこそできる機能としては、先に紹介したカメラの利用制限や不要アプリの遠隔アンインストールのほか、業務アプリの暗号化や業務アプリの削除ブロック、Wi-Fi/NFC接続ブロック、リモートワイプ時の業務データのみの削除などが挙げられる。
通常のAndroid OSとBoxToneのMDM機能を組み込んだAndroid OSのセキュリティ管理機能の比較 |
BoxToneと提携しているAndroidデバイスベンダーは、グーグル、サムスン電子、ソニー、LGエレクトロニクス、HTC、NEC、シャープ、京セラ、パナソニックなど非常に数多い。このためNTTドコモのビジネスmoperaあんしんマネージャーにおいても、2012年冬モデル以降のほぼすべてのスマートフォンがOSレベルのセキュリティ管理機能に対応している。実は、ほとんどのAndroidデバイスにBoxToneの技術は組み込まれていたというわけだ。
BoxToneのソリューションはiOSにも対応している。ただ、iOSに関しては、AndroidのようなOSへのセキュリティ管理機能の組み込みはない。とはいえAndroidと同様、「エージェントのインストールが不要」という特徴をiOS向けでも有している。
アップルがサードパーティ向けに公開しているプッシュ通知技術「APNs(Apple Push Notification service)」を利用し、エージェントなしで遠隔から制御できるそうだ。「APNsの技術はどのMDMベンダーでも使うことができるが、我々はAPNsを非常に深いレベルで活用することで、エージェントレスを実現している」とリード氏は説明する。