ノキアソリューションズ＆ネットワークス クラウド＆ネットワークサービス（CNS）事業部 ECEソリューションビジネスセンター デジタルオートメーションAPJ担当 事業開発マネージャー 生田目瑛子氏

――プライベートLTEやローカル5Gをはじめとするグローバルのプライベートネットワーク市場をどう見ていますか。

生田目　導入実績がどんどん増えてきています。2025年第1四半期（1Q）時点で、ノキアは890社のお客様にプライベートネットワークを提供しています。なかでも公共部門・スマートシティ向けが最多で270社、次いでエネルギー業界が202件、製造業が177件、港湾や空港などの輸送領域では148件の導入実績があります（図表）。

図表　プライベートワイヤレスの顧客統計（2025年第1四半期）

地域別に見ていくと、欧州が38％と最も多く、次点が北米で24％、APAC（アジア太平洋）が22％、中南米が10％、中東・アフリカが6％となっています。また、プライベートLTEとローカル5Gの構成比で言うと、プライベートLTEメインが77％、プライベートLTEとローカル5Gの併用が4％、ローカル5Gメインが19％です。現時点ではプライベートLTEが大きな割合を占めていますが、ローカル5G対応デバイスの増加やユースケースのさらなる拡大により、今後ローカル5Gの比率が伸びていくでしょう。

航空会社や港湾で導入進む

――海外におけるプライベートネットワークの活用事例にはどんなものがありますか。

生田目　ドイツの航空会社・ルフトハンザグループのルフトハンザテクニックは、航空機のエンジン部品の検査にノキアのローカル5Gソリューションを活用しています。従来は技術者が現地に赴き、部品を目視で検査する必要がありましたが、ローカル5Gを用いて現地スタッフが撮影した高精細映像をリアルタイム伝送し、遠隔地からの部品検査が可能になったそうです。

メンテナンス時の意思決定においても、現場スタッフと遠隔の技術者がローカル5Gでつながり、その場で迅速かつ的確な判断が行えるようになったと聞いています。

また、キャビン（客室）の内装デザインを仮想空間上に再現し、ARグラス等を通じてクライアントがその空間をリアルに体験できるようにするといった取り組みにもローカル5Gが活用されています。これにより、スムーズかつ臨場感のあるAR体験を実現できているとのことです。

低遅延や大容量といった要件をそれほど必要としない企業に対しては、プライベートLTEを提案しています。例えば、米ワシントンのハスキー港では、当社のプライベートLTE基地局6台を設置し、東京ドーム約9個分に相当する広大な港湾エリアをカバーしています。コンテナの位置追跡や作業員間の音声通話などにプライベートLTEを活用しているそうです。

セルラーネットワークに関する技術支援も行える点も、我々の強みです。ベルギーの通信事業者であるCitymeshとは、同国内に設置された70台の防災・防犯ドローンを制御・運用するため、世界初となる全国規模の5G接続型ドローンネットワーク「SENSE」を構築しました。また、宇宙ビジネスを手掛ける米Intuitive Machinesと共同で、月面に4G基地局を設置しました。ローバー（探査機）が取得した映像などを月面着陸機に集約し、地球に向けて伝送する実証を行っています。

――プライベートネットワークを導入した企業は、どんな恩恵を受けられますか。

生田目　英調査会社のGlobalDataと共同で、プライベートネットワークの導入成果に関する調査を実施しました。これによると、従業員同士の連携が強化されたと回答した企業は90％にのぼり、CO2削減につながったとした企業は79％、生産性が向上したと答えた企業は75％でした。さらに、80％の企業が6カ月以内に、すべての企業が2年以内にROI（投資利益率）の目標を達成したと回答しています。