「Amazon S3と同等のストレージシステムは一般企業でも実現できる」――クラウディアン太田社長インタビュー

ニフティやNTT Comのクラウドサービスにも採用されている「Cloudian」は、Amazon S3と同等のストレージシステムを構築できる製品だ。バックアップ用ストレージを経済的に実現できるソリューションとして、一般企業からも注目を集めている。クラウディアン社の太田社長に聞いた。


――企業システムのクラウド化が進展していますが、サーバーやストレージなどのコンピューティングリソースをネットワーク越しに利用するIaaSについても、だいぶ利用が本格化してきました。

太田 インフラ層をサービスとして提供するIaaSは、基本的にアマゾンが作り上げた世界ですが、ものすごい勢いで伸びています。例えば先日、アマゾンのクラウドストレージサービス「Amazon S3(Simple Storage Service)」に保存されているオブジェクトの数が1兆3000億個を超えたことが明らかにされました。まだ日本では本格利用が始まったばかりともいえますが、米国ではすでにビジネスとして成立することが証明されています。

――ストレージをクラウドサービスとして提供する事業者は日本にもたくさんいますが、アマゾンやグーグルなどと何か違いはあるのですか。

太田 日本のサービスは、100GB単位でしか利用できなかったり、アマゾンと比べて1ケタ以上も料金が高かったりというのが一般的です。これは、顧客ごとに専用ストレージ装置を用意して割り当てており、その設備投資を回収せざるを得ないためです。「クラウド」と称しているものの、実は分散コンピューティングなどクラウド特有の技術は使っていないケースが多く存在します。

アマゾン、グーグル、マイクロソフトといった米国の代表的なクラウド事業者は、クラウドのインフラ層、ストレージを月額従量課金のサービスとして提供していますが、その技術は自社開発しています。アマゾンと同様のサービスを提供したいが、「そのための技術はどうしたらいいのか?」というのが多くの日本の事業者の課題でした。

――クラウディアン社のソフトウェア製品「Cloudian」は、この課題を解決するものですね。Amazon S3と同等のサービスを実現できるということですが、簡単に説明していただけますか。

太田 Cloudianは、数PB(ペタバイト)といった膨大なデータを経済的に保存可能なストレージシステムを構築できるソフトウェア製品です。Cloudianでは、数十万円程度の安価な汎用サーバーを複数台並べて、それらの記憶用ディスクを仮想的に統合します。そして、多数の利用者が1つのストレージシステムとして同時に利用できます。

また、Amazon S3のインターフェース、S3 APIに完全準拠しているのもCloudianの非常に大きな特徴です。Cloudianを採用するクラウド事業者は、Amazon S3と同等のサービスを提供できるのです。

Amazon S3と同水準のGB(ギガバイト)当たり月額10円前後の従量制料金で提供している日本の代表的なサービスとしては、ニフティの「ニフティクラウドストレージ」とNTTコミュニケーションズの「Bizホスティング クラウド・エヌ」が挙げられますが、この2社ともCloudianを採用しています。やっと本物のクラウドが日本にも登場し始めたといえるでしょう。

クラウディアン 代表取締役CEO 太田洋氏
クラウディアン 代表取締役CEO 太田洋氏

アマゾンやグーグルの経済性をオンプレミスでも

――Cloudianは、クラウド事業者がAmazon S3のようなサービスを提供するためのソフトウェア製品というわけですね。

太田 答えは、「はい」と「いいえ」の両方です。Cloudianは、Amazon S3に完全に準拠しているだけではなく、サービス提供に必要な統計、課金、管理等の機能もパッケージ化されています。このためクラウド事業者は、短期間でAmazon S3と同等のサービスを提供開始できます。

しかし、Cloudianはクラウド事業者専用の製品というわけではありません。最近、企業のストレージシステムにCloudianを利用したいという引き合いが増えています。Cloudianは、数十万円程度の汎用的なサーバー2~3台の規模から利用できます。つまり、利用者を限定する企業内専用(プライベート)のクラウドや企業構内のオンプレミスのストレージシステムとして利用できる実用性も兼ね備えています。

―― 一般的に企業の情報システムでは、NASやSANといった専用のストレージ装置が使われています。普通の企業がCloudianでストレージシステムを構築するメリットはどういう点にあるのでしょうか。

太田 一番のメリットは経済性です。一般的に専用のストレージ装置は、容量が一杯になると上位機種に買い換え、データを移し替える必要があります。企業のデータ増加のペースは年率50%とも言われていますが、このため企業は将来を見越して数千万円クラスの高価な大容量装置に先行投資し、データで一杯になるとリプレースするというサイクルを繰り返してきました。

一方、Cloudianで構築したストレージシステムは、装置全体を買い換えるのではなく、新たなサーバーを追加するだけで、システム全体の容量を拡張することができます。また、仮にあるサーバーが故障したら、それを取り換えるだけで済みます。何千台ともいわれるサーバーを運用するグーグルでは、サーバー故障対応で深夜に技術者が呼び出されるといったことはありません。翌朝に出社して取り換えるだけですが、Cloudianも同じです。

つまり、Cloudianで構築したストレージシステムを利用すれば、大幅に設備調達コストや運用保守コストを削減できるのです。このことは、アマゾンやグーグルが月額10円前後の料金でサービス提供できていることから見ても明らかでしょう。

クラウドが今後いっそう発展していくことは間違いありませんが、すべてがクラウドに移行するわけではありません。「パブリッククラウドにデータを預けるのは不安だから、自社で運用したい」という企業のニーズはなくならないからです。実際には、パブリックとプライベートを使い分けるハイブリッドクラウドのほうが多くなると見ていますが、Cloudianなら高い経済性を持ったストレージシステムをプライベートで実現できます。

また、CloudianはS3 APIに準拠していますから、同じくS3 API準拠のAmazon S3やニフティクラウドストレージ、Bizホスティング クラウド・エヌなどのパブリッククラウドとの併用も簡単に行えます。

太田洋(おおた・ひろし)氏

クラウディアン・グループの創立者。Jフォン/ボーダフォン・ジャパン在籍時には、世界初の写真付きメールサービス「写メール」や、世界初のロケーションベースドサービスである「J-Skyステーション」および「J-ナビ・サービス」を開発するなど、モバイル業界にいくつもの「業界初」を導入してきた。

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