「通信と画像を警備業務と融合させたサービスを展開していく。今後の事業展開において、通信は必須の要素だ」
警備業界3位のセントラル警備保障(CSP)で、新規事業の開発と育成を担う加藤勉氏はそう語る。営業本部事業推進部内に2012年3月に設置された画像システム開発室の室長として、今最も力を入れているのが、監視カメラの映像を活用して遠隔監視・警備を行うサービスだ。
セントラル警備保障 営業本部事業推進部
画像システム開発室 室長 加藤勉氏
同社は長年、画像サーバーと録画用ストレージ、通信モジュールを内蔵した一体型カメラシステム「ポンカメ」シリーズを開発、販売してきた。電源さえあればどこでも“ポン”と置ける設置の簡便さが名前の由来だ。現在主力の第3世代製品「ポンカメハイビジョン」はWiMAXモジュールを搭載しており、遠隔地から高画質なライブ映像の閲覧、録画の確認が行えるのが特徴だ。
閉塞感が覆う警備業に活路
監視カメラの販売と設置工事を行う業者は多いが、CSPでは、センサー警報と連動させて、異常が発生した時に専門の警備スタッフがカメラ映像から現場の状況を確認したり、パトロール隊員の出動や警察への通報を行うといった機械警備業務と連携したサービスも行える。もちろん、死角を作らないカメラの配置をはじめ、防犯のノウハウも大きな差別化要素だ。カメラ販売業者とも、一般的な警備業務とも差別化した独自サービスが強みだ。
このカメラ映像を活用した警備サービスをより推進するため、CSPは昨年11月に「CSP画像センター」を設立した。異常発生時の現場確認、隊員出動や通報業務等を集約し(図表)、顧客企業のニーズに応じてさまざまなサービスを提供している。
図表 Pilina WiMAXによる映像データへのアクセス
最近好評なのが「画像巡回サービス」だ。警備スタッフを派遣し、施設内を定期に巡回する一般的な警備業務は契約料も高い。常駐/巡回警備は人件費が高いため、導入できる企業が限られる。その代わりに複数台のカメラを設置して、遠隔から専門スタッフが映像で異常の有無を確認する。
高画質カメラの映像と通信回線を用いることで手頃な価格で導入できる巡回警備サービスを実現し、今までリーチできなかったユーザーを開拓しているのだ。CSPにとっても、人件費の高騰を抑えて利益率の良いサービスが展開できるわけだ。
また、ポンカメはLAN配線が不要なため短期間での利用にも適しており、2010年の日本APEC開催時は警察庁にも採用された。イベントの警備や、近年需要が高まっている街頭防犯など、新ニーズの取り込みにも役立つ。
こうした新サービスの開発に注力する背景には、警備業界を覆う閉塞感がある。ホームセキュリティという未開拓の領域はあるものの、契約単価の高い法人市場はまさに飽和状態だ。警備業務の契約更新時に値下げによって顧客を奪い合う状況にあり、そこからの活路を「画像と通信」で見出そうとしている。