ソフトバンクと東京科学大、3.9GHz帯5G波の衛星信号への干渉抑圧技術を屋外で実証

屋外での実証実験に成功 衛星地球局と5G基地局を1.5キロまで近接可能に

2025年1月に行った屋外の実証実験では、同大学のグラウンドに5G基地局と模擬衛星地球局を設置。約120メートル離れた場所で双方の信号を受信し、干渉キャンセラーを適用させ、5G信号の干渉を抑圧することに成功した。免許の関係上、実験には3.3GHz帯(中心周波数3.25GHz)、帯域幅80MHzの電波を使用した。

屋外実証実験の構成

屋外実証実験の構成

デモンストレーションは実証実験と同様の構成で行われ、干渉キャンセラーが5G信号の衛星信号に対する干渉を抑圧していることが、受信信号のスペクトラムおよび64QAMのコンスタレーション(デジタル変調信号の座標表示)で確認できた。干渉信号がない状態では、コンスタレーション上に8×8のポイントがはっきりと表示されるが、干渉を発生させるとバラバラになり、やがてエラー表示となった。そこに干渉キャンセラーを適用させると、ポイント表示が復活した。

写真左が干渉発生時のスペクトラムアナライザー表示。白い長方形の中央部分の衛星信号の波形が干渉信号の影響を受けているが、写真右の干渉キャンセラー作動時は干渉信号が抑圧されている

写真左が干渉発生時のスペクトラムアナライザー表示。白い長方形の中央部分の衛星信号の波形が干渉信号の影響を受けているが、写真右の干渉キャンセラー作動時は干渉信号が抑圧されている

同様に、写真左が干渉発生時の64QAMのコンスタレーション、写真右が干渉抑圧時。干渉抑圧により受信信号に誤りがないことが確認できる

同様に、写真左が干渉発生時の64QAMのコンスタレーション、写真右が干渉抑圧時。干渉抑圧により受信信号に誤りがないことが確認できる

映像伝送によるデモも行われた。学生がグラウンドでキャッチボールする様子のライブ映像を衛星信号で伝送させ、そこに5Gの干渉信号を発生させると映像が停止した。干渉キャンセラーを動作させると通信が確立し、ライブ映像が再び動き出した。

ソフトバンク 基盤技術研究室の藤井隆史氏。モニターの映像は模擬衛星信号によりライブ伝送したもの

ソフトバンク 基盤技術研究室の藤井隆史氏。モニターの映像は模擬衛星信号によりライブ伝送したもの

今回の装置で成功した干渉信号の30dBの抑圧は、衛星地球局と5G基地局の離隔距離では1.5キロに相当するという。「田舎では2キロから3キロおきに5G基地局を設置している」(藤井輝也氏)ので、このキャンセラーが実用化されれば、5G基地局の置局制限を大きく緩和できる可能性がある。

干渉キャンセラー適用時の離隔距離の計算例

 

干渉キャンセラー適用時の離隔距離の計算例

ソフトバンク 基盤技術研究室の藤井隆史氏は、「実証実験を行い干渉キャンセラーが『使えるもの』であることを見せて、(衛星地球局の運営者との)交渉のテーブルに着くことを目指している」と話し、技術の周知に力を入れていく姿勢を示した。

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