<連載>実践 生成AIの教科書――実績豊富な活用事例とノウハウで学ぶ[第3回]日立グループでの「生成AI」への取り組み

日立グループは2023年、データサイエンティストやAIの研究者、広範なスペシャリストをGenerative AIセンターへ集結。全社での生成AI活用を推進し、そこで得た知見を顧客へ提供しています。本連載では、国内屈指の実績に裏付けられたAI活用のノウハウを開示していきます。

<連載>実践 生成AIの教科書第2回では各企業での典型的な取り組みをご紹介しましたが、今回は日立グループの取り組みをご紹介します。日立グループでは現在、全社への生成AI適用を推進しており、システム開発やカスタマーサービスの生産性向上をめざしています。また、そこで蓄積したナレッジを活用し、お客さまに対してコンサルティングサービスなどの形で提供しています。

1.イノベーションの加速に向けて

日立グループは生成AIを効果的に活用することで、企業の潜在力をフルに引き出すことをめざしています。日本企業の中には、先人たちが築き上げ、受け継がれてきた知識が数多く蓄積されています。この蓄積は日本企業の強みとして、その活動を下支えしています。一方で、そうした知恵が社内で分散していたり、技術者の暗黙知になっていたりして、十分に生かせていないこともよくあります。

それらの知識を集約することで、日立グループならではの生成AIを開発していくことを私たちは考えています。また、生成AIを活用し、お客さまの強みを拡大するお手伝いをできればと考えています。それを通じて、日本におけるイノベーションの加速と、持続的な経済成長の実現に貢献していきます。

図1.11 イノベーションの加速に向けて

図1.11 イノベーションの加速に向けて

2.Generative AIセンターの設立

生成AIのリスクを低減し、安全な方法で活用できるようにするには、社内外の様々な知見を掛け合わせる必要があります。そこで日立グループでは、生成AIの知見を有するデータサイエンティストやAI研究者だけでなく、社内IT、セキュリティ、法務、品質保証、知的財産などといった業務のスペシャリストを集結し、リスクマネジメントしながら活用を推進するCoE(Center of Excellence)組織「日立製作所Generative AIセンター」を2023年5月に設立しました(図1.12)。

Generative AIセンターでは、日立社内向けに利用ガイドラインの策定や社内相談窓口の設置、セキュアな社内利用環境の整備などを行なっています。またGenerative AIセンターがハブとなり、日立グループ全体でコミュニティを形成し、ナレッジやノウハウを集約しています。そこで蓄積した知見を、コンサルティングサービスや環境構築・運用支援サービスという形でお客さまに提供しています。

図1.12 日立製作所Generative AIセンターの設立

なおご参考までに、日立グループが取り組むAI関連事業について、歴史を追って説明します(図1.13)。

日立グループでは長年にわたり社会インフラを支えるため、1960年代からデータサイエンスやAIを業務に活用してきました。そうしたなか、ビッグデータおよびAIに対するニーズの高まりにあわせて、2012年に事業部の中にデータサイエンスチームを正式に発足しました。また2018年には、「2021年度までに日立グループ全体でデータサイエンティストを3000名に増やす」と宣言しました。2020年には日立グループ内のトップデータサイエンティスト約100名を集結して、Lumada Data Science Lab.(以下、LDSL)を立ち上げました。2023年時点で約250名が所属しています。LDSLのデータサイエンティストチームは、日立グループ内および幅広い業種のお客さまと毎年100件以上のデータサイエンスプロジェクトを経験してきました。その活動を通じて様々な学びがあり、データサイエンスプロジェクトを成功させるためのノウハウを蓄積してきました。

その一方、社会インフラを担う日立として、長年、専門組織による事業支援とガバナンスの継続的な改善に取り組み、見識を深めてきました。2013年には、「プライバシー保護のための取り組み」を強化し、多数のデータ利活用プロジェクトに対して、プライバシーリスクの影響評価やリスク低減施策を実施してきました。その過程で、パーソナルデータの利活用を推進し、実案件での課題や国内外の動向、インシデント対応など、様々なノウハウを蓄積してきました。また、2021年には「AI倫理原則」を策定し、外部有識者による「AI倫理アドバイザリーボード」の助言も受けながら、数百件以上のプロジェクトを評価しています。

今回発足したGenerative AI センターは、これまでの取り組みを包括的に継承し、生成AIプロジェクトに応用する形で推進しています。

図1.13 日立のAI関連事業の流れ

図1.13 日立のAI関連事業の流れ

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