KCCS佐々木社長インタビュー「事業シナジーを基本に新展開へ」

2011年度に売上高1000億円を達成した京セラコミュニケーションシステム(KCCS)。4月に就任した佐々木節夫社長は、さらなる成長に向けて、3つの事業領域のシナジーを活かしていく方針だ。


――御社の事業領域は、「ICT」「通信エンジニアリング」「経営コンサルティング」の3つですが、これらをどのように位置付け伸ばしていきますか。

佐々木 ICTは企業の情報基盤、通信エンジニアリングは社会の通信基盤、経営コンサルティングは企業の経営基盤であり、この3つの基盤を上手く連動させることで、企業のお客様にとって必要なサービスやソリューションを提供する。そのためにKCCSグループのシナジーを発揮させることを基本に考えています。

――シナジーが今後のキーワードですね。一般にはICT事業を軸にした会社として知られていると思いますが。

佐々木 昨年度(2012年3月期)の売上で言えば、当社単体では74%がICT関連事業で、26%が通信エンジニアリングでした。経営コンサルティングは当社ではなく、グループ会社のKCCSマネジメントコンサルティング(KCMC)が行っていますので、KCCSグループ連結では62:35:3という比率になっています。

グループ連結で通信エンジニアリング事業の比率が上がっているのは、KCCS本体だけでなく、KCCSモバイルエンジニアリング(KCME)も行っているからです。我々は複数の携帯キャリアのインフラ構築を請け負っており、事業会社を分けておく必要があったためで、具体的にはKCCSはKDDIグループ、KCMEはソフトバンクモバイルを担当しています。

――ICT事業の比率がかなり高いわけですね。

佐々木 確かにそうですが、昨今は通信エンジニアリング業界も徐々にIPの世界に向かっていますし、ICT業界はクラウド時代を迎えていますので、両者の事業領域が重なって来ていると感じています。

例えば、SBエナジーが京都に建設したソーラーパークはKCCSが工事を請け負っていますが、通信エンジニアリングで培った施工技術で展開しています。また、現時点ではICTはまだ関係ありませんが、次の展開がどうなるかというと、HEMSやBEMSといったものが出てきてビルや家庭内の機器の制御のためにICTのノウハウが必要になります。

つまり、ICTと通信エンジニアリング双方の技術を合わせてシナジーを作るのではなく、結果的に両者が近寄ってくるという案件が増えてきていますので、そこで我々の強みを活かせるよう、考えていきます。

――シナジーの観点だと、ソフトバンクの例でも分かるように、通信事業者はその事業ノウハウを活かして自然エネルギー分野に参入しやすいですね。

佐々木 通信エンジニアリング分野は、今後大きな伸びを期待するのが難しくなっています。しかし我々には、この分野で300社以上のパートナーがおられ、その方々に対する元請責任があります。それを果たすためにも業容拡大は必須であり、やはり自然エネルギー分野だと思います。

実は、京セラグループは1975年からソーラーエネルギー事業を手掛けてきており、他社が次々と撤退するなかでも継続し、現在日本でシステムを内製化できるのは京セラだけになっています。お客様からの品質への評価も高く、15年、20年と長くお使いいただけるシステムです。

ですから今後、自然エネルギー分野を、通信エンジニアリングの伸び率の鈍化を補えるような「第4の柱」にできればいいと思っています。

4つのソリューションを中心に

――ICT分野は震災以降、「クラウド」「BCP」「グローバル」等、さまざまなキーワードが登場し様相が変わっています。

佐々木 震災の件も含め、昨今の情報に対する価値の高まりとともに、それを守るセキュアなネットワークをどう組んでいくのかが課題になっています。また、他方では、グローバルということも含めてワークスタイルが多様化してきており、それに伴って、端末も多様化しています。

そうしたなかで我々は、これまでのような単純にネットワークなどを提供するとかではなく、ソリューションを提供していかなければなりません。それが大枠の戦略です。

――具体化しているソリューションはどういうものですか。

佐々木 大別して4つあります。まず、連結経営管理ソリューション「GreenOffice Profit Management」を集中的にやっていこうと思っています。

これは、ERPやお客様の既存システムから日々の実績データを取り込み、京セラグループの経営管理手法である「アメーバ経営」のノウハウをベースに、事業経営に必要な部門・取引先・品種などのセグメント別業績管理を可能にするソリューションです。5月に連結管理機能を強化したVer.1.4.0を市場投入しました。

もう1つは、言葉にすると少し格好良過ぎですが、ハイエンドなクラウドサービスです。我々が提供するのはプライベートクラウドですが、キャリアグレードのサービスを提供するには、アプリケーション、ネットワーク、インフラエンジニアの三位一体で提供しなければならないと思っています。そういう三位一体という意味での、ハイエンドなクラウドサービスを提供していきます。

3番目のキーワードは「セキュリティ」です。この8 月に「nCircle PureCloud」という、小・中規模のネットワークに対応したクラウド型ネットワーク脆弱性診断サービスを開始しました。これはお客様の海外拠点までネットワーク診断ができる点がセールスポイントです。

4つめは「グリーンネット」という通信サービスの一括請求サービスで、現在1万社以上のお客様がいらっしゃるので、そこに新たな付加価値を乗せて提供していく方針です。

月刊テレコミュニケーション2012年10月号から転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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佐々木節夫(ささき・せつお)氏

1981年早稲田大学理工学部卒業、京都セラミック(現京セラ)入社。86年北米京セラグループ統括会社KYOCERA International,Inc.へ出向、93年帰任。95年京セラコミュニケーションシステム設立に伴い出向、97年経営情報システム事業本部副本部長。2000年京セラコミュニケーションシステムに転籍、取締役。01年経営情報システム事業本部本部長、06年常務取締役ICT営業本部長、08年専務取締役ICT事業統括本部長、12年4月代表取締役社長に就任。京セラ執行役員(兼務)、現在に至る

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