生成AIで変わる入力方法
生成AIがエージェントとしてユーザーの身近な存在になると、ユーザーが発する言葉や文章などの不定形な情報から、自分自身では決めきれていない情報を仮決めし、提案できるようになる。生成AIがこのような人の考えに歩み寄り、何をしたいのか先回りして予測可能になると考えられる。つまりAIエージェントがユーザーに代わって思考することで、ユーザーは端末に情報を入力する際の思考の量を減らすことができる(図表)。
図表 生成Ai時代の「属人機」とは
これまではWeb画面のような入力フォームに、入れる単語や文章をあらかじめ考えておく必要があったが、不定形な文章を入力しても生成AIがフォームに必要な内容を抽出してくれるので、チャットや音声での入力が可能となる。
「生成AIがもう少し進化すると、自然な会話で情報を入力できるようになり、スマホのインターフェースや入力方法が変わるのではないか」とKPMGコンサルティング Advanced Innovative Technology ビジネスユニット マネジャーの山本良太氏は指摘する。そうなったとき、スマホも現在の形状から変わる可能性が高い。すでに変化の兆しは見え始めている。
KPMGコンサルティング Advanced Innovative Technology ビジネスユニット マネジャー 山本良太氏
ドイツテレコムがクアルコム、Brain.aiと共同開発したAIスマホのコンセプトは、OSとAIが一体化し、AIアシスタントがスマホのアプリに代わって動作するというものだ。例えば料理のデリバリーを頼む際、テキストまたは音声入力により簡単な指示を出すだけで、お店や決済の選択肢が提示され、スムーズに手続きを行える。
ドイツテレコムがクアルコム、Brain.aiと共同開発したAIスマホは、OSとAIが一体化している
AIスタートアップの米rabbit社が開発した「rabbit r1」は、生成AIを搭載した手のひらサイズのモバイル端末。自然言語を処理できる独自OSにより、ユーザーの意図や行動を理解する。音声で指示を出すと、うさぎの姿をしたAIエージェントが様々なタスクを実行するので、アプリをダウンロードする必要がないという。
「rabbit r1」は自然言語を処理できる独自OSにより、ユーザーの意図や行動を理解する
入力方法がテキストから音声に置き換わると、画面の情報表示は少なくて済む。「究極的にはディスプレイを持たない端末が登場する可能性もある」と嶋氏は述べる。
近未来では、スマホの役割は根本から変わるだろうと予想するのは、KPMGコンサルティング Digital Transformation Acceleration ビジネスユニット リードスペシャリストの佐藤基右氏だ。
「現在、スマホは音声主体のコミュニケーション端末だが、AIの進化により、五感に訴えかけるようなマルチモーダルなコミュニケーションが可能となっていく。また、スマホで提供されるサービスは機能が制限された“所有型”ではなく、常に最新の機能が得られる“共有型”に移行することで、コミュニケーション端末からインターフェースや認証端末へと役割がシフトするだろう」
KPMGコンサルティング AdvancedInnovative Technology ビジネスユニット シニアマネジャーの海保忠勝氏は「さらに進化すると、スマホはデバイスを通じて目や耳から集まってくる情報を統合し、アウトプットすることで義足を動かしたり、様々なロボットを動かす人間拡張ツールとして進化する」と指摘する。現実になったとき、スマホの役割が再定義されると見る。
KPMGコンサルティング Advanced Innovative Technology ビジネスユニット シニアマネジャー 海保忠勝氏
これまでポストスマホとして様々なデバイスが候補に挙がってきたが、どれも決め手に欠けていた。生成AIにより、いよいよポストスマホが本格化することになりそうだ。