「IoTゴミ箱」でまちはどう変わる? 5G基地局や人流データ取得ツールに変貌も

欧米を中心に普及が始まっている「スマートゴミ箱」だが、国内でも観光地やスタジアムなどで導入が進んできた。ユーザー企業からは、スマートゴミ箱を「5G基地局化したい」といった声も上がる。

宮島や表参道などで導入進む

しかし、ここ数年で国内でもSmaGOの導入事例が増えてきたと同氏は胸を張る。2024年9月に京都・八坂神社、10月には長崎スタジアムシティ、11月には大阪・長居公園などでSmaGOが設置された。企業や自治体がごみ問題に本腰を入れ始めたと言えそうだが、「政府主導による支援事業が立ち上がってきていることも大きい」という。

例えば環境省は2024年3月、「ごみのポイ捨て・発生抑制対策等モデル事業(観光庁連携事業)」の公募を開始。同事業に採択されたのが、ICTソリューション事業などを手掛けるBIPROGYだ。広島県・廿日市市・全国清涼飲料連合会らと共同で、世界文化遺産・厳島神社があることで知られる広島・宮島エリアにSmaGOを設置し、ごみのポイ捨て抑止に向けて取り組んでいる。

世界遺産・宮島に設置されたSmaGO(出典:フォーステック)

世界遺産・宮島に設置されたSmaGO(出典:フォーステック)

表参道エリアの防犯・防災等に取り組む原宿表参道欅会は、観光庁が公募する「オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業」に採択され、既設ごみ箱をリプレースする形でSmaGO 34台を2024年10月に導入した。

また、日本特殊陶業は環境への取り組みに対して賛同・協賛しており、ラッピング広告も掲示している。具体的には、同社のコーポレートロゴや環境メッセージに加え、ヘラルボニー社が契約する作家のアート作品をSmaGO本体に貼付している。同社は、「異彩を、放て。」をミッションに掲げ、異彩作家とともに新しい文化づくりに励んでいる。

東京・表参道に設置されたSmaGO(出典:フォーステック)

東京・表参道に設置されたSmaGO(出典:フォーステック)

「SDGsに力を入れている企業は、広告出稿で“2次PR”ができる」と森氏。企業名や製品に加え、自社の環境活動やカーボンニュートラルへの取り組みを社会にアピールできるというわけだ。広告出稿費でSmaGOの導入コストやごみ回収の運用コスト等の一部を賄える点も大きなメリットとなる。

SmaGOで災害時の通信確保

森氏によると、スマートゴミ箱は「ごみの蓄積状況を可視化する」「ごみ収集を効率化する」といった用途以外でもニーズが高まっているという。

例えば、ある企業はフォーステックの協力のもと、街中のSmaGOにビーコン端末等を取り付け、通行人のスマホと連携させることで人流データを取得するといった実証を行っている。街中にある電源や通信機能を備えたスマートゴミ箱を活用していくことで、歩行者の通行量調査を効率的に実施できる。

さらに、「SmaGOを5G基地局化したい」という声も一部から上がっているそうだ。基地局の設置場所の確保は、通信事業者らにとって大きな課題の1つである。街灯を基地局化するなど、様々なアイデアが登場しているが、これが実現すればまた1つ新たな置局方法が生まれることになる。

そのほか、停電等を想定した非常用電源機能の搭載や、筐体に取り付けたデジタルサイネージによる避難場所の掲示・広告訴求なども俎上に上がっているとのことだ。

フォーステックは、まずは国内のSmaGO設置台数を400台から1000台に増やしていきたい考えだ。「日本でも当たり前のようにスマートゴミ箱の設置が進む世の中にしていきたいと考えている。ごみ問題のような目を背けたくなる社会課題に対して、SmaGOを活用してコミットし続けたい」と森氏は意気込んだ。

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