――通信市場とNTT東日本を取り巻く現状をどう見ていますか。
山村 通信市場は数年前までとは大きく様変わりし、従来型の競争から急激に変わってきています。
単に固定系同士の競争に移動通信が入ってきているというだけでなく、SkypeやLINE等の色々なアプリが出てきて、お客様にとって音声通信の手段は本当に多様化してきています。このため音声トラフィックはずっとある一定量を維持できるという状況ではなくなってきています。
第1四半期の実績でも、音声の減収をIP系の増収で補えず減収減益傾向となり、厳しい経営環境が続いています。
――第1四半期は、「フレッツ光」の純増も16万4000回線で、年間目標に対する進捗率も20.5%と、純増数の鈍化傾向が続いています。
山村 光の純増については、市況に左右される部分が大きいと思います。特に今年は、KDDIさんの大幅なエリア拡大などの影響もあって苦戦していますが、彼らの一定のエリアのカバーが終わればいつまでもこの調子が続くことはないと思っています。
そういった特殊要因を除けば、光サービスは数年前までのような急激な成長は期待できないでしょうが、今後も一定の成長は続けられると考えています。
――足元を見ると、KDDIはエリア拡大だけでなく、固定と携帯の割引サービスである「auスマートバリュー」も好調で、対策が必要な状況になっていると思います。
山村 実は最近、料金だけとか、何か1つの要因で勝負が決まることはなさそうだということが分かってきました。過去に割高な料金が原因で当社が大きくシェアを下げたサービスがあるかというと、それはありませんでした。確かに、少しでも安価な方に流れるお客様もいらっしゃいますが、やはり総合的なことがシェアを左右すると思っています。ですから、無理をして料金競争をする気はありません。
しかし、他の取り組みは必要です。例えば、都市部のワンルーム賃貸マンションは若者が中心です。彼らの光サービスに対する不満を調査すると、料金面もありますが、「入居日から使えない」こともありました。光の工事は1週間ほどかかります。それが理由で無線ブロードバンドサービスを選択されるお客様をフレッツ光に誘導する新しい施策はないか、といった対策を個々の案件としては当然考えていかなければなりません。