OpenFlow導入ガイド[後編]――対応ベンダー急拡大で気になる製品選びのポイント

グーグルやNTTコミュニケーションズが商用環境で利用するなど、すでに“実導入”フェーズに入ったOpenFlow。後編では、徐々に選択肢が広がりつつあるOpenFlow対応製品の選び方のポイントを解説する。


<オーバーレイ方式>

一方、オーバーレイ方式は、「今あるネットワークで実現できるのが一番の特徴」――。オーバーレイ方式の代表的製品であるニシラ・ネットワークス「Nicira NVP」の代理店を務める東京エレクトロンデバイスCN営業本部 コーポレートアカウント営業部 グループリーダーの宮本隆義氏はこのように語る。

東京エレクトロンデバイスCN営業本部 コーポレートアカウント営業部 グループリーダーの宮本隆義氏
東京エレクトロンデバイスCN営業本部 コーポレートアカウント営業部 グループリーダー 宮本隆義氏

オーバーレイ方式では、トンネル技術によりエッジ同士で制御を行い、経路は従来のネットワークを流用する仕組みになっている。このため通信するエッジ同士がOpenFlowに対応していればよく、ハイパーバイザー上で動作するOpenFlow対応の仮想スイッチ「Open vSwitch」(OVS)などを利用することで、機器の置き換えなしに導入できる。また、コントローラーとスイッチは送信元と送信先だけを把握していればよいため保持する経路情報が少なく済み、スケーラビリティの点でも有利だ。

さらに宮本氏は、NVPの魅力として次の点も挙げる。「SDNの1つのメリットとしてソフトウェアのスピードで機能改良が進んでいくことがある。NVPのコンポーネントはすべてソフトウェアなので製品開発のペースが早く、およそ2カ月に1回の頻度で機能が向上している」。なお、NVPは、コントローラーとNVP専用のOVSなどがパッケージ化されたソリューションパックとなっている。

他方、ホップ・バイ・ホップ方式と比べたデメリットとしては、経路は従来のネットワークをそのまま利用するため、OpenFlowの大きな特徴である高度な経路制御は行えず、また既存の物理ネットワークが抱える課題の解決策とはならない点が挙げられる。さらにサーバー仮想化環境でないと実装できない。

このような違いがあるホップ・バイ・ホップ方式とオーバーレイ方式だが、どちらが絶対的に優れているという話ではなく、「それぞれ向き不向きがあり、両方式は共存していくと思う」とNEC UNIVERGEサポートセンター 主任の早坂真美子氏は話す。NECでも今後、オーバーレイ方式のコントローラーの提供を検討する可能性もあるという。

NEC UNIVERGEサポートセンター 主任 早坂真美子氏
NEC UNIVERGEサポートセンター 主任 早坂真美子氏

すでにホップ・バイ・ホップ方式とオーバーレイ方式の両方に対応したコントローラーを開発中のベンダーもある。NTTデータだ。同社は世界で初めて両方式に対応する「バーチャルネットワークコントローラVer2.0」を2012年内に販売開始する予定にしている。

NTTデータの発表資料では、ホップ・バイ・ホップ方式を「トラフィック流量が少ない通信経路を優先して新規通信に割り当てる機能を持つため、従来40%程度しか利用されていないネットワークを、約100%利用することができる」、オーバーレイ方式については「初期投資コストを抑えたOpenFlow導入が可能」と、それぞれの特徴を説明している。

また、バーチャルネットワークコントローラVer2.0は両方式の混在にも対応しており、まず既存ネットワークを活かしてオーバーレイ方式でネットワークの仮想化を行い、その後、順次OpenFlowスイッチに置き換えてホップ・バイ・ホップ方式に移行していくことも可能としている。

大事なのは、OpenFlowで何を実現したいのか――。それをきちんと踏まえたうえで自社により適した方式を選択することだ。

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