年間5.7億円減の実績
NECは東京と大阪の「NECブロードバンドソリューションセンター」で04年からワークスタイル変革を実践。数百人の社員がフリーアドレス制のオフィスで働き、モバイルワーク、テレワークも活用している。
その効果は、費用面で年間5.7億円に上るという。フロア移転費用や交通費、印刷費などの直接的なコストと、効率化した時間を時間給で金額換算した結果だ。CO2の排出は、移動回数の削減分を除いて(交通機関はNEC社員の動態に関わらず動いている)約43%改善したという。
NECブロードバンドソリューションセンターのフリーアドレスオフィス。リモートアクセスも活用しており、外出先でも社内情報にアクセスできる。本文中で紹介した環境・コスト面での効果のほか、顧客対面時間が従来比で40%アップするなどの効果も見られたという |
NECはこのノウハウをベースに、“オフィスまるごとエコ”のコンセプトを掲げ、図表1のようにオフィス全体にわたるソリューションを提供している。キーポイントはもちろん、「まるごと」だ。
図表1 NECの「オフィスまるごとエコ」のコンセプト(クリックで拡大) |
照明やICT機器を電力利用効率の高いものに入れ替えて、個別にエネルギー利用の効率化を図るとともに、ワークスタイル変革とEMSによって、オフィス全体のエネルギー消費とコストを圧縮。個別最適化と全体最適化の両方に取り組むことで、高い効果が期待できるという。
企業ネットワークソリューション事業本部企業ネットワーク事業企画部グループマネージャーの本間祐司氏は次のように語る。
「個別最適化だけでは、エコだけを目的に投資をすることになり、難しい。例えば、多大な賃料を払っているオフィスの3割に紙の資料が居座っているのならば、それをどうすれば有効活用したり削減したりできるのかを提案する。ワークスタイル変革は、固定化したコストを削減する抜本策になる」
まず「紙」より始めよ
結論から言えば、最終目標はモバイルワークとフリーアドレスの実現だ。営業職をはじめとする在席率の低い部門に導入することにより、移動回数とオフィススペースを削減しつつ、業務効率を高める。
その第一歩となるのが、紙の削減だ。NEC・第二企業ネットワークソリューション事業部UCシステム部 マネージャー(ワークスタイル変革コンサルティンググループ)の小川康之氏は「紙から解放されることがワークスタイルを変える最初のステップ」と語る。
人は情報のあるところでしか仕事ができない。情報の取得・伝達・共有を紙に頼っているから場所と時間が制限されるのである。PCとネットワークだけでは仕事はできない。ドキュメントの電子化が不可欠だ。
ただし、電子化だけでは十分でない。個人で利用する情報であればファイルサーバーに突っ込んでおくだけでよいが、複数人で共有する情報は効率的に検索できる仕組みが必要だ。しかも、ITリテラシーの高低に依存しないものでなければならない。
NECが提案しているのは「UNIVERGE ビジュアルキャビネット」だ。左上の写真のように、現実のファイルキャビネットをバーチャルに再現したものである。情報の在処を直感的に視認できて、画面上の(バーチャルな)バインダーをドラッグ&ドロップ操作で移動・整理できる。
NECの「UNIVERGE ビジュアルキャビネット」。タッチパネル操作により、現実にファイルをキャビネットから出し入れするのに近い感覚で目的の情報にアクセスできる |
紙文書の取り込みも簡単だ。受信FAXの送信先番号やメールアドレスにより指定のバインダーに振り分ける。また、複合機等で文書をスキャンする際にも、収納するバインダーを指定するQRコードが着いた紙を一緒にスキャンするだけでよい。
ちなみに、データ量と整理状況が一見して視認できるため、定期的に整理と破棄を促す効果もある。サーバーやストレージが無闇に増えるといった事態も回避できるだろう。
NECのWebサイトでは、質問に答えるだけでオフィスの現状を診断できる「オフィスドック2」を実施している。利用者へのアンケートでは、ブロードバンドソリューションセンターの見学希望も多いようだ |