「働き方改革関連法」の施行が今年4月に迫り、いよいよ現実味を帯びてきた「物流2024年問題」。国土交通省によると、トラックドライバーの時間外労働の上限規制により、2024年には輸送能力の約14%、2030年には約34%が不足すると予想されている。人手不足や働き手の高齢化が叫ばれるなか、デジタルを活用した「物流DX」の重要性が日に日に高まっている。
この物流DXを通じて2024年問題の解決に取り組んでいるのが、KDDIと椿本チエインだ。KDDIと椿本チエイン、その子会社の椿本マシナリーは2022年11月、物流倉庫内の省人化やコスト削減、生産性向上に向けて業務提携を結んだ。
産業用チェーンで世界シェア1位の椿本チエインは、長年にわたってマテハン事業にも注力してきた。マテハンとは、物流や製造現場で使われる専門用語で、モノの運搬作業を指す。椿本チエインは、ピッキング作業等の効率化・無人化を実現する3次元マテハンシステム「T-AstroX(アストロクス)」などを提供。椿本マシナリーは、こうしたマテハン機器の最適配置などを行う物流エンジニアリング事業を手掛けてきた。
そして今年1月、KDDIと椿本チエインは合弁会社「Nexa Ware(ネクサウェア)」を設立し、同年4月より事業を開始する。「椿本チエインの経験とKDDIの通信ネットワークに関するノウハウを組み合わせ、物流倉庫DXに取り組んでいく」。KDDIから出向し、同社 取締役副社長に就任する古茂田渉氏は新会社設立の狙いをこう語る。2028年に80億円規模の売上目標を掲げる。
KDDI ソリューション事業本部 コネクティッドビジネス本部 モビリティビジネス開発部 部長 古茂田渉氏
(Nexa Ware 取締役副社長に就任)
古茂田氏が物流倉庫DXを推進する際の課題の1つと指摘するのは、「マテハン機器の導入にあたり、特定メーカーの機器で固められるケースが多い」ことだ。つまり、顧客が最適な機器導入を選択できる環境が整っていないのである。また、倉庫ごとにWMS(倉庫管理システム)やWCS(倉庫制御システム)が構築され、同一企業内でシステムが統合されていないケースも少なくない。倉庫内のデータ分析・利活用も課題だ。
図表1 倉庫業界のDXにおける課題
これらの課題を解決するため、Nexa Wareは「次世代型の物流倉庫自動化ソリューション」を提供開始する。古茂田氏曰く、「ワンストップ」でのサポートが大きな特徴だという。「これまではマテハン機器を導入したらそこで取引が終了する“フロービジネス”だった。KDDIが通信領域で培った“ストックビジネス”で、倉庫自動化の設計からデータ分析による改善提案、マテハン機器のアップデートまでを支援していく」
図表2 次世代型の物流倉庫自動化ソリューションの概要